テレビの伝え方も様々だ。ニュースやドキュメンタリーのように出来事をリアルに伝える生々しい映像を軸にする番組もある。『あさイチ』のような情報番組はリアルな映像を使いながらもスタジオでの出演者同士のかけあいの中の語りの言葉を引き出すジャンルの番組だ。
この日、カテリーナさんが心の内に浮かんだ“戦争”の実像について素直に語った言葉はどんな生々しい映像よりも心に響いてくるものだった。彼女の言葉は本質を見つめる眼力と人間性、さらに抜群の表現力がある。ウクライナの戦争だけにとどまらない。あらゆる戦争というものの本質につながる言葉だったと思う。
日本の戦争も「日常」の中にあった
その証拠に番組の最後で紹介された視聴者からのメッセージ以下のようなものがあった。
「102歳の祖母がいます。戦時下の生活を少し聞いたことがありますが、太平洋戦争の時も今のウクライナと同じで、日常の生活の中にある戦争だったと言ってました。夜間警報が鳴っても慣れてしまって防空壕に行かず布団から出ず寝ていたりとか……。私にはイメージできませんでしたが、今カテリーナさんの取材を見てこんな感じなのかと実感しました」(大阪府・40代)
ウクライナに限らず、戦争という行為について私たちはどのように記録し、どのように子どもたちに伝えていくのか。そのことを考えていた人たちがちゃんといた。カテリーナさんの5年ぶりの里帰りの様子は2月23日午前10時05分からのドキュメンタリー番組『私の故郷 ウクナイナ』(再放送)で詳しく見ることができる。
【プロフィール】
水島宏明(みずしま・ひろあき)/1957年北海道生まれ。札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー『母さんが死んだ』や准看護婦制度の問題点を問う『天使の矛盾』を制作。ロンドン、ベルリン特派員を歴任。日本テレビで「NNNドキュメント」ディレクターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。『ネットカフェ難民』の名づけ親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。2012年から法政大学社会学部教授。2016年から上智大学文学部新聞学科教授(報道論)。放送批評誌「GALAC」前編集長。近著に『メディアは「貧困」をどう伝えたか 現場からの証言:年越し派遣村からコロナショックまで』(同時代社)、『内側から見たテレビ─やらせ・捏造・情報操作の構造─』(朝日新書)、『想像力欠如社会』(弘文堂)。