二階堂ふみと言葉をかわす宍戸開
それはズバリ、「MI6やCIAを題材にしたスパイ映画の下位互換だと思われてしまったから」ではないだろうか。
ハリウッド映画にはイギリスの秘密情報部「MI6」のエージェントを主人公にした『007』シリーズや、アメリカの中央情報局「CIA」の極秘諜報部隊「IMF(※注: IMFは架空の組織)」の諜報員を主人公にした『ミッション:インポッシブル』シリーズなど、世界的大ヒット作がある。
厳密に言えば同じではないが、スパイアクション作品としての側面も強い『VIVANT』は海外の映画ファンからすれば、“日本のMI6やCIAのような組織の一員が主人公のスパイもの”として思われていた可能性は高いだろう。
さらに忌憚なく言うなら、継ぎ込まれている予算が桁違いで、映像のダイナミックさもハンパない『007』や『ミッション:インポッシブル』に比べたら、『VIVANT』は小粒な劣化版のように判断されてしまっていたとしても、おかしくはない。
もし『VIVANT』を最後まで視聴してもらえれば、予想外の展開の連続となる多重構造のストーリーが圧巻なので、海外の映画ファンにも満足してもらえるのではないかと思うが、そもそも食指が動かなかったのだろう。
日本人だけが『VIVANT』に感じる高揚感
では、逆になぜ、日本ではあんなに大ヒットしたのかと言えば、それは斬新性があったからだ。世界的に見ると斬新性は薄いのだが、日本人からすると非常に斬新だったということである。
まず「別班」という組織の存在をもともと知っていた人はさほど多くなく、大半の人が『VIVANT』によってその存在を知ったことだろう。
そのため多くの視聴者が、日本にもMI6やCIAのようなスパイ活動を行う秘密組織が実在したのか! という驚きがあったに違いない。
ちなみに元別班員に取材した書籍や記事などを読むと、実際にはドラマのようなかっこいい活躍をすることはほぼなく、地味な情報収集活動ばかりのようだが、どんな作品にも実像とフィクションの差異は大なり小なりあるものなので、別班が実在していることが重要というわけだ。