考えておくプロセスが大切
3人目は、在宅医療専門医で向日葵クリニック院長の中村明澄さんだ。中村さんは話し合うことが大事だと説く。
「もし、自分が神経難病などで人工栄養(胃ろう)や人工呼吸管理が必要になったとき、とても悩むと思います。いますぐであれば、医療の力と誰かの手も借りながら、それでも何かの役に立てることを模索して生きていく選択をするかもしれないですが、20年後は、まったく違う選択をしているかもしれません。
命にかかわる大きな選択を迫られたとき、約7割のかたは自分の意思表示ができない状態だといわれています。知識があってもなかなか簡単に決められるものではありません。ですから、時間のあるときに、延命治療について情報収集してよく考え、大切な人と話し合ってみることが推奨されています。
そのとき、すべて決めておく必要はありません。いろいろ考えて発信しておくプロセスそのものが大切です。実際は、病状により刻々と選択肢が変わるなか、最も事情に通じているのは医療者なので、担当医の判断に任せることもひとつの選択だと思います。
今後は、延命治療のセカンドオピニオンを受けられるようになるのも必要かもしれません。仮に家族に判断を委ねられて迷った場合、『その治療をやったときとやらなかったときで結果がどれだけ変わるか』を尋ねてみるのもよいでしょう。例えば、心肺蘇生について『生き返ることは難しく、むしろ肋骨が折れてつらい可能性がある』と言われたらまた判断も変わってくると思います」(中村さん)
(了)
※女性セブン2024年3月28日号