元横綱・白鵬を取り巻く環境
告発状にはその後、A市議は警察に行き、弁護士を通じたB氏との示談交渉となったが、連絡がつかなくなったとある。さらに知人の話として、B氏が暴力団の下部組織に関係していることが示唆されている。ただ、この点については前出の地元企業社長が否定した。
「酒の席でA市議が“(B氏は)まるでヤクザですよね”と言うから、“ぽいよね。ほんとヤクザだよね”と酒の上でのジョークとして言った。(B氏は)高校時代からの付き合いだが反社に思える行動は見たことがない」
確認するべく白鵬米の販売会社に連絡すると、窓口の人間は「(B氏は)もういない。すでに会社は解散状態です」とするのみ。相撲協会の広報部は告発文について、「広報部では把握していないので、調査するかは答えられない」と回答した。師匠代行の玉垣親方は直撃に「協会から何も聞いていない」とするのみで、告発状の宛先となったとされるコンプライアンス部長・花籠親方は記者の問い掛けに無言を貫いた。
結果として、「白鵬米」のビジネスは成り立たなくなった。南魚沼で白鵬米を生産する男性が話す。
「(B氏の)販売会社に“今年の契約をしたい”と言ったが、向こうが応じなかった。(白鵬米は)売れたんですが、広告宣伝、親方や協会へのマージンで儲けがほとんどなかったといいます。ふるさと納税も、市がB氏の会社と連絡を取れなくなったとのことで、1年で終わりました」
宮城野親方が巡業で訪れた際に南魚沼の米の美味しさに驚いて始まったという触れ込みの白鵬米プロジェクトは、そうして終わりを迎えていた。
市民会館には、試食会と同じ日に市へ贈呈された白鵬の優勝額が今も飾られ、「親方は当地の南魚沼産コシヒカリをまさに神の宿る米と評されています」との文言が添えられているが、地元の米生産者は「白鵬のブランドで一儲けしようとした人たちが、いい加減な商売をしたようにしか思えない」と嘆いた。
※週刊ポスト2024年3月29日号