国内

【日本最大の暴力団「山口組」の歴史】戦える他団体はなくなり、繰り返されてきた「分裂抗争」 いかにして“一強”が確立されたのか

終戦後の1946年、三代目組長を襲名した田岡一雄(写真/共同通信社)

終戦後の1946年、三代目組長を襲名した田岡一雄(写真/共同通信社)

 そのルーツは港湾労働者の集まりに過ぎなかった。山口組はいかにして日本の暴力団の頂点に立ったのか。半世紀にわたって取材してきたノンフィクション作家・溝口敦氏が「山口組」のキーマンを挙げる。【前後編の前編。後編を読む】                                                  

 * * *
 山口組は日本最大、最強の暴力団といっていい。つまり近年暴力団全体の縮小、退潮が続いているが、その中でも山口組は依然、最多の組員を抱えるもっとも知名度の高い暴力団であり続けている。

「恐怖印」というべき山口組のイメージが結ばれる原動力となったのは、山口組がほぼ10年に一度のペースで繰り返してきた抗争と、それについての各種の報道だったろう。報道により山口組の好戦性は定着、増幅した。

 山口組は1915年(大正4年)、初代・山口春吉により神戸で結成され、戦前には特に浪曲興行で知られる存在だった。田岡一雄は終戦後の1946年、三代目組長を襲名し、今日「最大、最強」といわれる山口組の基礎、原型を作った。

 若頭・地道行雄を斬り込み行動隊長として、本拠地の神戸ばかりか九州、四国、山陰、関西、中京、関東、北陸などに進出、「全国制覇」といわれるまでの展開を示した。

 田岡は晩年、心筋梗塞で健康に恵まれなかったが、それでも根っからの好戦性は失わなかった。夫人のフミ子もよく田岡を支え、若頭、若頭補佐などから成る執行部を巧妙にコントロールしてきた。山口組の綱領をはじめ、今日の山口組のバックボーンを調えたのは田岡であり、田岡抜きで今に至る山口組を語ることはできない。

 若頭・地道は田岡が元気だった時代に暗躍、ほぼ全国制覇を完成した功労者だったが、1966年、兵庫県警により「山口組壊滅作戦」が開始されると、いち早く山口組の解散を唱えたことで田岡にうとまれ、若頭を解任された。

 田岡に心服し、田岡という日本一の親分の下で「日本一の子分になる」と忠誠を誓い、その通りに実行したのが地道の次の次の若頭・山本健一だった。彼が参加した事件としては大阪での鶴田浩二襲撃事件、同じく大阪での明友会事件、指揮を執った抗争としては福岡事件(夜桜銀次こと平尾国人の暗殺をきっかけにする福岡勢との凶器準備集合事件)や大阪戦争がある。

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン