国内

【日本最大の暴力団「山口組」の歴史と“今”】六代目山口組における分裂抗争で注目された伝説の人物

宅見勝・五代目山口組若頭(写真/共同通信社)

宅見勝・五代目山口組若頭(写真/共同通信社)

 日本最大の暴力団として今も勢力を維持する山口組。彼らはいかにして日本の暴力団の頂点に立ったのか。半世紀にわたって取材してきたノンフィクション作家・溝口敦氏が「山口組」のキーマンを挙げる。【前後編の後編。前編から読む

 * * *
 五代目山口組は渡辺芳則組長の下、宅見勝若頭の体制でスタートする。宅見は経済ヤクザでもあった。彼は目から鼻に抜けるほど聡く財も貯えたし、渡辺組長を自分用のロボットとして扱い、就任後数年間その発言を封じることまでした。

 だが、そういう渡辺組長にも忠臣がいた。中野太郎若頭補佐である。中野はもともと山健組の出身で、渡辺にとっては叔父貴というべき存在だった。中野は自身も京都・八幡市の理髪店で会津小鉄会に襲撃されて、かえって返り討ちにしたが、事件に宅見がからんでいると考え、1997年8月、襲撃班を組み、新神戸駅前の新神戸オリエンタルホテルのラウンジで宅見を射殺した。

 これにより宅見はヤクザとしての生涯を絶たれたが、いわば戦後派ヤクザの代表が宅見だった。彼は自分の親分を敬愛せず、道具としてわが利益のために仕立てて、いいように使った。田岡時代の山口組執行部は田岡を神のように崇め、心から仕えたが、そうした「美風」は田岡、竹中時代で絶え、ヤクザが誇る「親子盃」は宅見のころから形骸化した。

 宅見事件後、残された宅見組らの組員たちは中野会への報復に立ち、若頭や副会長を射殺して仇討ちを済ませる。

 渡辺組長は中野のおかげで宅見を除くことには成功するが、執行部が絶縁処分を決めた中野を再び山口組に迎え入れることは許されなかった。そのため渡辺組長は若頭や若頭補佐が長らく空席のままでも、補充すらできなかった。

 こうして渡辺組長は当時、若頭補佐の一人だった司忍らに因果を含められ、健康体にもかかわらず、2005年、無冠で引退、後を司に譲った。血を流すことなく組長交代劇が行なわれたのだ。

関連記事

トピックス

ヤマハ発動機の現社長の日高祥博氏(時事通信フォト)
〈ヤマハ発動機社長を娘が切りつけ〉関係者が明かした日高社長の素顔「バイク野郎で大企業の社長っぽくない。家をあけることが多かったのかな」 海外通エリート社長は足下の家庭で……
NEWSポストセブン
復帰作にあたる舞台が公演中止になった前山剛久(インスタグラムより)
《神田沙也加さんの元恋人》前山剛久の復帰舞台、会場側は“上演中止”発表に驚き「聞いていません」
NEWSポストセブン
写真を見せると「出会いが多いから…」と話した眞鍋氏
《破局後に即ブロック》バレー女子日本代表監督・眞鍋政義氏、不倫相手に「チームの内部情報」を漏洩か「あいつはあれと付き合ってんねん」 本人は不倫を否定
NEWSポストセブン
物件探しデートを楽しむ宮司アナと常田氏
《そろそろ入籍では?》フジ宮司愛海アナ 恋人のバイオリスト・常田俊太郎氏と“愛の巣探し”デート
NEWSポストセブン
バレーボール女子日本代表監督の眞鍋政義氏が“火の鳥不倫”か(時事通信)
《合宿先で密会不倫》バレー女子日本代表・監督つとめた眞鍋政義氏が女性トラブル、コート外で見せていた別の顔
NEWSポストセブン
高市早苗氏、急進の原動力は?(時事通信フォト)
【自民党総裁選で巻き起こる「高市早苗現象」】対中国政策で岩盤保守層から固い支持 「石丸現象」の仕掛け人は「外からステルスで支援」
週刊ポスト
事件現場となった中野区のタワーマンション
【中野タワマン・ハサミが刺さり死亡】家賃30万超の新築物件に住む若手エリート公認会計士に何が? 「振りかざしたら刺さってしまった」という交際相手の佐藤琴美容疑者(25)にDVの可能性
NEWSポストセブン
殺人と覚醒剤取締法違反の罪に問われた須藤早貴被告
「YouTubeで過去事例を検索」“紀州のドン・ファン殺人公判”で明らかになった55歳年下元妻・須藤早貴被告の海外志向 逮捕で断たれたドバイで生活する「夢」
NEWSポストセブン
深セン日本人学校が入居するビル(時事通信フォト)
《深セン市で襲撃された10歳男児が死亡》「私の子が何か間違ったことをしたの?」凄惨な犯行現場、亡くなった男の子は「日中ハーフ」と中華系メディアが報道
NEWSポストセブン
殺人と覚せい剤取締法違反に問われている須藤早貴被告
【有名な男優に会いたかった】ドンファン元妻・須藤早貴被告と共演した「しみけん」が明かす「彼女が面接シートに書いていたこと」
週刊ポスト
桂ざこばさんとの関係が深い沢田研二
【深酒はしなかった】沢田研二の「京懐石で誕生日会」にザ・タイガースのメンバーが集結!ただし「彼だけは不参加でした」
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第15回】もうすぐ後期高齢者、衰えた自分には価値がないのかと気が滅入る…老いを前向きに捉えるには?
週刊ポスト