取材希望者が会見場に入りきらず、別室で中継映像を見ての取材となった人たちも(AFP=時事)
頬を引き締め、唇を薄く固く引き締めた
“嘘をつかれていた”ということへのフラストレーションは強く、「借金は一平さん自身が作ったものだと説明しました。それを僕が肩代わりしたという話を、その時に代理人に話したそうです」「これらは全く、すべてが嘘だったということです」と話すと、頬を引き締め、唇を薄く固く引き締めた。この仕草は会見、何度となく繰り返される。
ギャンブルに関して初めて知ったのは韓国での開幕第1戦が終わった後のチームミーティングだと話した大谷選手だが、通訳がおらずなんとなく理解していた程度だといい、「なんとなく違和感を感じていました」と唇をなめ、唇が見えなくなるほど口元を強く真一文字に引き締めた。
人は不愉快な出来事に対し苦痛が大きかった場合、唇を薄く引き締める傾向があると、FBI捜査官として仕草の心理学に詳しいジョー・ナヴァロ氏の著書に書かれている。唇が見えなくなるほど固く結ばれたままの場合は、あまりに強いストレスから、それを見たくないというと無意識の表れだという。目を閉じ、嫌な出来事を見ないようにするのと同じく、唇を引き締めたままにすることで、自分の心を守ろうとしているのだ。
会見後半、問題が発覚し、警察に引き渡すことになるまで流れについて話すと、ネガティブな感情が強まったのだろう。自分の気持ちをなだめる仕草が多くなる。「ブックメーカーに対して送金をしてくれと頼んだことも、許可したことももちろんないです」と体を揺らし、右頬を手の平でさする。水原氏から話を聞き、「これはやっぱりおかしいと思い、代理人を呼んで、そこで話し合いました」と左の頬を手の平でなで、「弁護士の人からは、窃盗と詐欺で警察と当局に引き渡すと話されました」と述べた。
「これがそこまでの流れ。僕はもちろんスポーツ賭博に関ししていないですし、送金をしていた事実は全くありません」と述べると、右手で顎をしっかり撫で、帽子を触る。結婚を発表した時の囲み会見で見せていたのは、頬に軽く触ったり、指先で軽くかいたりするようなソフトタッチのわずかな仕草だ。だがこの会見では手の平でしっかりと頬をなで、顎を強く撫でていた。感情の揺れが大きく、それを落ち着かせなだめるため、仕草が大きくなったのだろう。
「正直、ショックという言葉が正しいとは思わないですし、それ以上の、うまく言葉では表せないような感覚で1週間過ごしてきた」と話す大谷選手。「正直、ショックという」で上半身を起こした後、大きく息を吐いたのが印象的だった。想像がつかないほどのフラストレーションが、その心中にため込まれていたのだろう。息を吐くことで感じていた怒りを和らげたのだ。
最後に、「気持ちを切り替えるのは難しいですが」と述べつつ、背筋を伸ばし胸を張って会見を終えた大谷選手。その様子を見る限り、この問題がこれからのシーズン、彼の野球に大きな影響を与えることはないと感じさせた。