2020年に調教師試験に合格した名手・蛯名正義氏
馬主さんにとっても海外での活躍は、とても栄誉なことです。競馬は、「もともと俺とお前の馬ではどっちが速いか競走しようぜ。それをみんなに見てもらおう」というところから始まっています。日本だけではなく、世界中の人々に自分の馬が素晴らしいのだということを伝えたい。もちろん調教師にもそういう思いはあります。
また、強い馬を持っていたとしても、日本のレース数は限られています。芝1800mのGIはないし、この時季でいえば2400mや1600mのGIレースがありませんよね。そこにさらに強い馬がいたりすると、なかなか勝つのは難しい。2023年秋でいえばジャパンカップでイクイノックスと走るより、12月の香港へ行った方がいいと判断した陣営もあるかもしれません。
そもそも海外へ行こうという話が出てくること自体がすごいことなんです。そこにたどり着くまで何勝もして、さまざまな困難を克服してきている。海外へ行くような馬を育てることは本当に大変なことなんです。
そんなことをあれこれ考えながら、日本馬を応援するのも楽しいと思います。ああ、僕も行きたいなあ。行けるよう、頑張ります!
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。
※週刊ポスト2024年4月5日号