イヤホンによる事故は、車やバイク、自転車に関連したものだけではない。東京では先月、イヤホンを着用して横断歩道を渡っていた男性が車にひかれ大怪我を負った。また2023年には、佐賀県内の踏切をイヤホン着用のままで渡っていた男性が、接近してきた列車に気が付かず接触、死亡している。このように、運転中でなく歩行中であっても、イヤホン着用によって危機的状況に気が付かず怪我をしたり、命を落とす場合もある。
線路内に落ちるワイヤレスイヤホン
都内の大手私鉄勤務・丸井弘一さん(仮名・40代)は、特にワイヤレスタイプのイヤホンのせいで、業務的にも、そして乗客の安全性という観点からも、危険な状態に陥っていると感じている。
「ワイヤレスイヤホンを線路内に落とされる方は、大きな駅であれば1日何人もいらっしゃるほどです。イヤホン自体高額ですから、落とした物を自分で拾おうとされる人も少なくありません。電車が来るから危険だと説明しても、なぜすぐ取ってくれないのかと怒鳴られたりしたこともあります。ホーム外の駅構内でも、イヤホンをしていて周囲に気が付かず人にぶつかって相手に怪我をさせたり、口論になって警察沙汰になったりとトラブルが相次いでいる印象です。実際、イヤホンのトラブルで電車が遅延したことも数えきれないほどあると思います」(丸井さん)
一方、ここまで紹介したほど深刻ではないが、イヤホンが原因で家庭や職場で大小様々なトラブルも発生しているようだ。千葉県在住の公務員・吉田鈴香さん(仮名・30代)がうんざりした表情で打ち明ける。
「夫は、仕事から帰ってきてもイヤホンを外さず、食事やトイレ、お風呂まで入るんです。話しかけても聞こえないのかと思ったら、ただイヤホンをつけてるだけで”聞こえてるよ”と返ってくることもあります。本人は気が付かないんでしょうが、周囲は相当迷惑していますし、自分勝手だなと思います」(吉田さん)
自宅内でも、イヤホンを着用していたことで音や気配に気が付かない夫が、吉田さんや子供達とぶつかり、怪我をしたこともあるというが、夫がイヤホンを外そうとする気配は、今に至るまでないという。神奈川県在住の会社員・船田太一さん(仮名・20代)も、吉田さんの夫と似たような上司の存在に爆発寸前だという。