「80歳ぐらいまで歌っていけたら」と話す田中さん
声が出にくいときも
コロナで歌えない時期を経験したことで、歌う喜び、とくにお客さんの前で歌うライブに喜びをより感じるようになりました。僕は今、東京都内で1人暮らしをし、東京を拠点に活動していますが、僕のライブには長く応援してくださっているファンの方、遠く九州などから足を運んでくださる方もいます。みなさんの応援が「これからも歌っていこう」という心の支えになっています。歌いながら、人間はひとりでは本当に何もできない、一人では生きていけないんだなあ、と思ったりしています。
卒園式や敬老会で歌うことが増えたとお話しましたが、子どもは昔も今も変わりませんね。コロナ中はマスクをしてかわいそうでしたが、今はマスクが取れ生き生きしています。卒園式では、卒園生と一緒に歌う曲もあるのですが、大きな口を開けて、あっちこっちキョロキョロしながらでも、間違えずに歌っています。5、6歳なのにしっかりしていて驚かされます。羨ましいかぎりです。僕は大きな音がしたり、前のほうのお客さんがあくびをしたりしただけで動揺して間違えることがありますから(笑)。
敬老会は、聴いてくださる方が僕より若かったりして、変な気持ちになったりするんですけども(笑)。年のせいで、ポッと歌詞を忘れることもありますが、ありがたいことに、お客さんのほうが歌詞を覚えていて助けてくれるんです。
“いったいいつまで歌っていけるのか”と、ときどき考えることがあります。年を重ねて、すべての五感が衰えていますし、リハーサルで張り切りすぎて本番で声が出づらくなったり、高音が出にくくなり音を下げて歌ったこともありますから。それでも、もっとたくさん歌っていきたい、80歳ぐらいまで歌っていけたらいいなあ、と思っています。
(後編に続く)
◆取材・文/中野裕子 撮影/山口比佐夫
【コンサート情報】2024年6月27日(木):開演は昼の部・午後2時〜と夜の部・午後6時〜の2部制。千代田区内幸町ホールにて。お申し込みは東京03-3493-6420。モリ・オフィスまで。