ライフ

岸博幸氏『余命10年』インタビュー 難病に罹って変わった意識「今の日本ではせめて病気の人や引退組からでも個々の欲望や幸せに忠実になった方がいい」

岸博幸氏が新作について語る

岸博幸氏が新作について語る

 昨年1月、元通産官僚で、昨今はバラエティ番組にも多数出演中の岸博幸氏(61)は、〈岸さんは多発性骨髄腫に罹患されています〉と、後の主治医となる血液内科医から唐突に告げられる。

 還暦を過ぎた頃から疲れがひどく、顔色が悪いのも〈年のせいだ〉と思ってきた。が、人間ドックを5年ぶりに受診すると、その場で専門医を紹介され、10日後には、完治が難しく、男性の罹患率は10万人に6人ともいうこの血液のがんの名前を聞くことになるのだ。

 岸氏はこの時、体調不良の原因がわかって安心する一方、〈治療を受ければあと10年か15年は大丈夫です〉という主治医の言葉にただ〈そうですか〉と頷くしかないほど動揺もしていたと書く。〈ふだんは、人の発言を詰めまくる僕が〉と。そして〈つまり、余命10年から15年ということなんだな〉と勝手に納得していたという自身の意識の変遷や、病気を機に〈やめたこと・始めたこと〉を、本書『余命10年』に綴るのである。

「正直、僕はこの手の本を出すのはイヤだったんです。病気を売りにするみたいで。だからこそどうせ出すなら、多少は読者の役に立つものにしたかった。

 僕はこの病気になったことで、人生観がかなり変わったんですよ。多発性骨髄腫は現実問題として治らない病気ではある。今でもお腹に液剤を入れる強力な注射を打ちに隔週で通院しているし、毎日朝晩飲む大量の薬の中には管理が厳しいサリドマイドのような薬もあって、体調のアップダウンもそれなりにシンドイんですね。

 あと一番迷惑な副作用が、煙草を吸うと心臓が苦しいんです。ならやめろよって話だけど、1日5~6本に減らしてもやめる気はない。酒も量は減ったけど飲んではいて、むしろ人生の残り時間が可視化されたからこそ、これからは〈ハッピー〉と〈エンジョイ〉の2つをより追求しようと、悟りを得ることもできたんです」

 ちなみに本書でいうハッピーとは、〈周囲に気兼ねするのはやめ、自分がやりたいこと、やるべきだと思うことを最優先にし、日々の自己満足度を高めること〉。一方エンジョイとは〈積極的に新しい世界に飛び込み、今までと違った経験をし、人生の幅を広げる〉ことで、岸氏は〈こうした考えは、かなり身勝手だと自覚している〉としつつも、〈かつて僕が生き方の軸としていたのに、いつのまにか追いやっていたもの〉の大事さに病気を機に気づけた自分は〈ラッキー〉だとすら書く。

「それこそ僕はドリーム・シアターというメタルバンドの追っかけをしていて、役所時代もライブがあると世界中、どこでも行ったり、好き勝手やってましたから。それが45を過ぎて結婚して、子供が2人できてからは、お金も稼がなきゃなんないし、わりと妥協することが多くなっちゃったんですね。それでも妻から見れば十分勝手らしいですけど(笑)。

 でも残りの10年もずっと妥協したままでいいのか、むしろより一層、やりたいことを好き勝手やらないとダメなんじゃないかって、実はこれ、僕に限らず社会全般に関して、真剣に思っていることなんです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン