日本の報道でも取り上げられた両親に語りかける中国の「故人AI」
アメリカで普及する“死者と語り合うサービス”
「実は、そうしたサービスはアメリカでは3〜4年前から普及しているんです」
こう語るのは、国際ジャーナリストの山田敏弘氏。
「2020年夏に、“死者を模倣する”というキャッチコピーで発表された『プロジェクト・ディセンバー』というチャットボット・サービスがそのはしりです。
チャットボットとは人工知能によって、自動的にテキスト形式での会話を行うプログラムのこと。このサービスの開発者が、自身の亡くなった祖母やスティーブ・ジョブズ氏との会話を作成したと発言して話題を集めました」(山田氏)
ユーザーは10ドル程度の登録料と、会話をしたい相手の名前や趣味、思い出などの情報を提出することで、テキスト形式でのチャットが100往復程度利用できる。さらに別のサービスでは月額50ドル課金すれば、無制限で会話を楽しめるという。
「2021年7月、『サンフランシスコ・クロニクル』紙が同様のサービスを利用して、8年前に亡くなったフィアンセと会話を続ける男性の姿を取り上げた。ちょうどコロナ禍で、突然の別れを受け入れられない人がアメリカで急激に増えていたことも注目された理由のひとつでしょう。ChatGPTの登場など生成AIサービスが広く一般化して技術レベルが格段に進歩したことも、“死者と語り合うサービスの普及”に寄与しています」(山田氏)
「死者への冒涜に当たる」という批判
そのように海外で普及が進む「故人AI」だが、さまざまな懸念も指摘されている。
まず挙げられるのは「死者への冒涜に当たる」という批判だ。
2019年、NHKは紅白歌合戦で『AI美空ひばり』を登場させ、本人そっくりのCGが新曲を歌い、「私の分まで、まだまだ頑張って」などの“語り”も入っていた。
だが、歌手の山下達郎は、「一言で申し上げると、冒涜です」、「技術としてはありかもしれませんが、歌番組の出演、CDの発売は絶対に否と考えます」と断じた。“故人の再現”において、故人の遺志がどこまで尊重されているのかなど不明点が多いことに、同じアーティストとして違和感を覚えているようだった。
