死亡したイランのライシ大統領(時事通信フォト)
3機のヘリのうち墜落したのは1機だけで、よりによってそこに一番の“玉”である大統領が乗っていた。通常なら、フライトレコーダーや現場の検証に時間をかけ、原因究明にあたるはずだ。
それを早々に“事故”として店仕舞いしたのは、イスラエルや米国によるテロとの憶測で中東情勢が混乱することを警戒した、イランの現実主義的対応だと考えられる。
翻って言えば、対外的には“事故”と発表したうえで、水面下ではヘリ墜落に“人為的操作”が加わっていなかったかを徹底的に調査するものと考えられる。
もちろん、ヘリがミサイルで撃ち落とされたはずはない。しかし、ロシアのプーチン政権に武装反乱を起こした民間軍事会社ワグネルの創始者・プリゴジンが自家用ジェットの墜落で死亡した件では、主翼の下に小型爆弾が仕掛けられたとされる。今回もそうした仕掛けやサイバー攻撃があった可能性は排除できない。
あらゆる手段をもって調査した結果、“人為的操作”の確証が得られたら、どうなるか。
イランは最近になって「やられたらやり返す」というゲームのルールを構築した。シリアのイラン大使館がイスラエルによる空爆を受けると、イランは報復としてイスラエルの軍事拠点をドローンやミサイルで攻撃した。
イランがイスラエル本土を攻撃するのは史上初のことだったが、このルールに基づけば、本件の実行犯や企図した者が判明すれば、イランは報復に動く。ただ、公式に“事故”と発表している以上、裏での処理になる。割り出した実行犯らを殺害するか、あるいはあえて殺害せずに両手両足を切断して眼球をえぐるといった残虐な仕打ちで苦しめようとする可能性がある。