イスラエルのネタニヤフ首相(時事通信フォト)
「動機」がある国家
イランの大統領の乗るヘリに人為的操作を加える「動機」と「能力」を持つ国──となると、イスラエルと米国の2つだ。
とりわけイスラエルは、ガザでのハマス掃討戦をめぐってICC(国際刑事裁判所)からネタニヤフ首相の逮捕状が請求されたことなどに対し、反発を強めている。
イスラエルからすれば、ハマスは“ユダヤ人は存在してはいけない”と考え、イスラエルを地上から抹消しようとするナチスのような集団で、妥協不可能だ。「全世界に同情されながら死に絶えるより、全世界を敵に回しても戦い生き残る」という考え方に基づく行動を続けている。自分たちの「生存権」が脅かされるなか、イスラエルには、ハマスを支援するイランに仕掛ける「動機」があるのはたしかだ。
にもかかわらず、早々に本件を“事故”と処理したイランの今後の動きとしては、核開発を加速させることが考えられる。
仮に今回の墜落死が人為的なものなのに、イランが静かに事態を収めざるを得なかったとすれば、それはイランが「核」を持っていないからだ。核保有が“公然の秘密”であるイスラエルに対しては強く出られない。本件により、イランで「核を持たないと外交の幅を狭める」という認識が強まり、核開発を進めていく展開が想定されるのだ。
イランが核を持てば、サウジアラビアは開発資金を提供してきたパキスタンの核を自国領内に移すだろう。中東の他のアラブ諸国も生き残りのために核保有を進め、核拡散は止まらなくなる。