ライフ

【脳卒中のリハビリ】最大限の効果を得るために重要な施設選び チェックすべきは「実績指数」や「病院機能評価」

(写真/PIXTA)

脳・神経系のリハビリを行う施設はどう選ぶべきか(写真/PIXTA)

 国立循環器病研究センターの調査(2010年の吹田研究)によると、5人に1人が生涯で一度は脳卒中を発症するという。脳卒中は日本人の死因の第4位であり、最悪の事態は免れたとしても、発症すると脳の一部や神経が損傷し、さまざまな後遺症や神経障害を抱えるケースが多い。そこで重要になってくるのがリハビリだ。“最善の脳神経系のリハビリ”について、ジャーナリストの鳥集徹氏がリポートする。【前後編の後編。前編から読む

 * * *
 最善の回復を達成するには、患者と家族の理解に加えて、リハビリにかける「頻度と時間」や病院での過ごし方も大切だと、ねりま健育会病院院長で、リハビリテーション専門医の酒向正春医師は強調する。

「当院では朝食から夕食の間で3時間のリハビリを実施し、それ以外の余暇時間にも自主訓練や立ち上がり訓練、気分転換にスタッフと歓談の時間を持つなどして、患者さんにはできる限りアクティブに気持ちよく過ごしてもらえるように工夫しています。

 日中であるにもかかわらず、リハビリ以外の時間はずっと患者さんをベッドに寝かせている病院がありますが、それでは回復は望めません。リハビリが終わった後でも、デイルームで座位を保ち、座ったまま横たわらないようにしなくてはいけません。

 寝てばかりいると心肺機能や体力、筋力が回復しないだけでなく、夜に深い睡眠を取ることができなくなり、日中ぼんやりして意欲も学習能力も低下する。そんな状態ではどんなにリハビリを行っても充分な効果は得られず、本来回復できるはずの目標まで到達できないのです」

 もしリハビリ病院を選ぶことになった場合には、施設を見学する際に、リハビリをしている人以外の患者の様子をチェックするといいだろう。ただし、病院選びに時間をかけすぎるのは本末転倒だ。全国有数のリハビリ病院である熊本機能病院副院長の総合リハビリテーションセンター長・渡邊進医師は言う。

「当院では脳卒中に加え、事故などで脳や神経に損傷を負ったかたも受け入れていますが、いずれも最初の3か月にどれだけしっかりリハビリを行うことができたかが予後を分ける。その後からどんなに一生懸命取り組んだとしても、回復はかなり遅くなります。早く始めるに越したことはありません」(渡邊医師)

渡邊進医師

渡邊進医師

 リハビリの効果を最大限得るためには薬の量をコントロールすることも重要だと酒向医師は話す。

「高齢になると10錠以上服用している患者さんも少なくありませんが、その中に抗精神病薬や睡眠薬が入っており、副作用で昼間もうとうとして、リハビリに悪影響が出るケースが散見されます。そのため当院では体調を迅速に安定させて薬を極力減らし、多くとも6剤以下に留めることを推奨しています」

酒向医師

酒向医師

 脳卒中に加え、難病の脳血管疾患「もやもや病」や高次脳機能障害など、他院では対応しづらい患者を多数診療している梅田脳・脊髄・神経クリニック院長の中川原譲二医師も、服薬管理の重要性を強調する。

「脳卒中の患者さんは、もともと心臓病や糖尿病、腎臓病などさまざまな病気をもっているかたが多い。しかし、リハビリを実施している間は、薬を追加することに慎重になってほしい。たとえば降圧剤によって血圧が下がることで、歩行訓練の途中や入浴中に転倒する可能性もある。そうした服薬に関する相談に乗ってくれる医師であるかどうかも、いい医師を見極めるべきポイントの1つと言えるでしょう」

関連キーワード

関連記事

トピックス

ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
新大関の安青錦(写真/共同通信社)
《里帰りは叶わぬまま》新大関・安青錦、母国ウクライナへの複雑な思い 3才上の兄は今なお戦禍での生活、国際電話での優勝報告に、ドイツで暮らす両親は涙 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《24歳の誕生日写真公開》愛子さま、ラオス訪問の準備進めるお姿 ハイネックにVネックを合わせて顔まわりをすっきりした印象に
NEWSポストセブン
韓国・漢拏山国立公園を訪れいてた中黒人観光客のマナーに批判が殺到した(漢拏山国立公園のHPより)
《スタバで焼酎&チキンも物議》中国人観光客が韓国の世界遺産で排泄行為…“衝撃の写真”が拡散 専門家は衛生文化の影響を指摘「IKEAのゴミ箱でする姿も見ました」
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン