「夫や孫のために買う」と男性店員を指名する(イメージ)

「夫や孫のために買う」と男性店員を指名する(イメージ)

 特にBさんが在籍する歯科では、数年前に患者とのトラブルにより、ネット上の「口コミ」に低評価が相次いでつけられる、という苦い経験があった。その影響もあるのか、患者とのトラブルをなるべく減らそう、表沙汰にしないという雰囲気が根強い。トラブルがないことをアピールしたい気持ちがあるからか、在籍する歯科医の情報を、写真を含め公開して開放的で患者が来院しやすい歯科にする、というのがオーナー院長の意向だ。

 院長は患者とのトラブルがないことを強調したいからか、何を言っても「あなたの思い込みではないのか」と言いがちで、明らかなセクハラ被害を訴え出ても「それでまたクチコミが荒れたら責任取ってくれるの?」と受け止めようとしない。被害を受ける女性歯科医、女性歯科衛生士にオーナー院長が寄り添う兆しは一切感じられないという。

「別に、外見を売りにしているわけでもありません。なので、写真を使わないでほしいと言っても”それなら辞める?”と言われるばかり。ハラスメントとはまったく関係ないはずの一般の患者さんまで怪しく見えてきてしまい、精神的に病んで辞めてしまった女性歯科医や歯科衛生士は何人もいる。それでもオーナー院長は対策を取らない。私だって、他に行けるところがあればすぐに勤務先を変えたい、でも、そんなに簡単に転籍はできません。患者さんからのセクハラに耐えるしかないんです」(Bさん)

 他にも、不動産情報サイトに「顔出し」している不動産会社の女性社員や、中古車販売会社の女性社員も、やはり同様の被害に遭っていた。だが、こうした業界ではこの手のセクハラやカスハラはもはや「日常」とされ、あえて訴え出るまでもない、などと被害女性たちは言う。その実態には驚くほかないし、過酷な現実に愕然とさせられた。

「正直、防ぎようがない」

 我々が気付かないだけで、密室や、密室に近い空間では、あまりにも多くのセクハラやカスハラが横行しており、被害者自身が、その被害を訴え出ることすら逆に「仕事に支障が出る」と思い込まされている状況が、ありとあらゆる場所で発生している。もちろん、これら被害の多くは女性が受けているわけだが、中には、男性が被害者になる例もある。神奈川県内にある、大型ショッピング施設内のアパレル店店長・Cさん(30代)がため息をつく。

「夫や孫のためにといって毎回来店し、一度も購入されない。若いイケメンの男性店員に接客されたいらしく、単に話したいから来店を繰り返される女性客がいます。こちらとしてはお客さんですから、どうやっても拒否できません。問題の女性客が来ても、目当ての従業員がいないとなれば、次の出勤日はいつかと問われます。一度の来店で、何時間も店に居座られ、当初は”服をたくさん買うからお昼ご飯付き合って”とまで言われたそうです。流石に、本社にも相談しました」(Cさん)

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