都庁周辺に張り出された禁煙の張り紙と、路上で喫煙する人。飲食店やホテル、オフィスなどの屋内は原則禁煙とする改正健康増進法は2020年4月1日から全面施行された(イメージ、時事通信フォト)
紙巻たばこであれば、加熱式と違ってたばこから副流煙が常に立ち上るため、誰が吸っているかは一目瞭然だったかもしれない。だが、加熱式たばこだと点火した火の色が見えることはないし、煙も少なくて誤魔化しやすい。こっそり吸いやすいため、においに気がついたとしても、人混みの中で隠れて吸っているのは誰かと特定することが難しい。
だが、このように「こっそり吸えるから」とは、加熱式たばこ愛用者だけが思っているに過ぎない幻想で、非喫煙者からすれば、禁止されている場所で、こっそり喫煙していることもバレバレだ。にもかかわらず、やはり「バレていない」と思い込んで、あちこちでこっそり加熱式たばこを口元に運ぶ人が後を絶たない。
「終電間際の電車、バスなどでは、乗客に車内でたばこを吸われた、という話をよく聞きますね」
こう話すのは、首都圏の大手私鉄勤務・Bさん(30代)。同じグループ内の電車やバス内で起きた乗客とのトラブルについて、最近「加熱式たばこ」絡みのものが増えたという。
「終電や終バスなど、酔ったお客さんがたばこを吸ってしまうことは、昔から少なからずありました。ですが最近は、酔客でなくとも、こっそり胸元に忍ばせた加熱式たばこを吸われるお客さんがいて、それが原因で周囲の客とトラブルに発展するパターンがある。混みやすい通勤電車でもこれですから、比較的空いている中長距離電車などでは、我々が見ていないと堂々と酒を飲み、加熱式たばこを吸われる方もいる。注意しても”におわないからいいだろう”とまで反論されるのです」(Bさん)
むろん、におわないと思っているのは喫煙当事者のみであり、あたりには加熱式たばこの強烈なにおいが漂っていて、周囲の客からもクレームが出ていた。それでも喫煙者側は「迷惑はかけていない」と引き下がらないのだ。
全面禁煙の庁舎内に加熱式たばこの吸い殻
「公的な職場ですから、全面禁煙になったときは、ヘビースモーカーの部長も仕方なくたばこをやめたほど。ごく一部を除けば、職員のほとんどが禁煙したんです、加熱式たばこに移行するまでは」
神奈川県在住の市役所職員・Cさん(40代)は、職場の市庁舎が数年前に「全面禁煙」化したことを大いに喜んだ。さらに、同じ職場に勤務する夫も、一日に3箱は吸うヘビースモーカーだったが、職場の全面禁煙を機に、自宅ベランダで吸っていた紙巻たばこをやめた。健康面でも経済面でもメリットがあると思っていたのも束の間、夫の同僚が「加熱式たばこ」を見せびらかし、職場内に一気に広まったというのだ。