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映画『九十歳。何がめでたい』脚本家・大島里美さんが明かす、唐沢寿明演じる“時代に取り残された”編集者の猛烈なキャラクターができるまで

担当編集・吉川役の唐沢寿明とはアドリブ連発。「白熱したかけあいを通じて、吉川のキャラもどんどんパワーアップしていきました」(前田哲監督)

原作もシリーズ累計183万部を突破!(c)2024映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会 (c)佐藤愛子/小学館

 映画館で映画を観たのは『ローマの休日』(日本での劇場公開は1954年)以来──そんな俄に信じられないような話まで飛び出しているというのが、佐藤愛子さんのベストセラーエッセイを原作とする映画『九十歳。何がめでたい』だ。草笛光子さんや唐沢寿明さんの一挙手一投足にドッと沸き、劇場は和気藹々とした雰囲気になっているというのだ。

「佐藤愛子先生は生きづらい世の中に怒りながらも明るくて、エッセイを読んだら元気になれる。シンプルに笑って、あっという間に読んでしまいました」

 脚本を担当した大島里美さんは原作に触れた際の感想を、はつらつとした表情でこう語った。

「エッセイなので映画になるかしらと、愛子先生が心配をしていらしたそうですが、エッセイがそもそも面白い。制作陣一同、原作の面白さを最大限に生かして作品化する方向にしていこうと意見が一致しました」(大島さん・以下同)

 脚本をまとめるにあたってまずは前田哲監督、大島さん、プロデューサーらが原作から映像で観たいと感じたエピソードを持ち寄って、取捨選択していった。

「それぞれ、入れたいエピソードが多すぎて選ぶのに苦労しました。北海道の別荘で娘の響子さんが蜂に刺される『蜂のキモチ』や『思い出のドロボー』など、尺との関係で泣く泣く削ったものも実はたくさんあります。映像になった中で特に思い入れが強いのは飼い犬のハナ(劇中ではハチ)の思い出話ですね。『グチャグチャ飯』はみんなが好きなエピソードで、たっぷり丁寧に描かれています」

 映画の構成には当初、母・娘・孫の女性3世代の家族の物語をしっとり描く案が挙がっていたという。

「ですが、これだけヒットしているエッセイです。私自身もそうでしたが、原作を読んで励まされる読者側の目線があったら感情移入できて、もっとエンタメとして楽しめる作品になるんじゃないかなって。

 男女を問わずみんな、愛子先生みたいな人にバシッと背中を叩かれたいという願望があると思うんです。そこで愛子先生に励まされる私たちの代表として編集者を据えて、断筆宣言をして書きたくない作家先生VS書かせたい編集者の物語にしたらどうだろう、と考えたのが大枠の始まりです」

 編集者がいかにして『女性セブン』の連載にこぎつけたか、佐藤さんと編集者の駆け引きの顚末は、事前資料のひとつとして大島さんの元へも送られていた。手土産を持って日参し、週刊誌でありながら書けるときに書くという前代未聞の「ときどき連載」が始まるまでのくだりは“ほぼ事実”だ。

「先生が書けない理由として、長年の執筆でひどくなった腱鞘炎の痛みを挙げて『もう書くのはやめろという天の配剤だ』と言えば、編集者が『では、もしも指の痛みがなくなったら、その時は天の配剤だと思って連載を引き受けてください』と返すとか、実際のやりとりがとにかくおかしくて(笑い)。印象的なやりとりは映画でそのまま使っています。

 原作(『増補版 九十歳。何がめでたい』)にある、愛子先生の旭日小綬章受章記者会見での問答を映画のゴールとして、編集者とタッグを組んでベストセラーを生み出していく過程に、原作から選りすぐりのエピソードを無理なく組んでいきました」

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