解散した和牛(写真は2018年)
「解散するときの感覚が違う」
――やはり、自分たちを信じられなくなったとき、受賞歴というのは1つのストッパーの役割を果たしてくれるのではないかと思うんです。自分たちは認められているんだ、と。銀シャリがM-1で勝ったときはどうでしたか。
橋本 まあ、漫才を辞めるという選択肢はなくなりましたよね。優勝っていうのは運とかもあると思うんですけど、辞めなくていいと言われている感じはありました。
鰻 でも、今も危機感はありますよ。獲ってるからどうというものでもないと思いますけど。
――やや触れにくいかもしれませんが、和牛も、もしM-1で勝っていたら解散という道を選ぶことはなかったのかなとも思ってしまうのですが。
橋本 そこは関係ないと思います。
鰻 だって、M-1で優勝していなくても十分、認められていましたから。
――一度、オール阪神・巨人さんとおぼん・こぼんさんに対談をしてもらったことがあるんです。2組とも何度も解散の危機があったけど最終的に続けることを選んだのは、お金になるからだと言っていたんです。漫才コンビの場合は、仕事が鎹(かすがい)になるんだと。そこは4人の共通した意見でした。でも和牛の解散はその法則からも外れているんですよね。近年、これだけ人気があるのに解散した例はそんなにないじゃないですか。
橋本 師匠方の場合は、どんな倦怠期も稼ぎになるという、ある意味、ドライな感覚で乗り越えてきたということなんでしょうね。でも、それはそれでいいことですよね。
鰻 ただ師匠方の感覚と、今の僕らの感覚はちょっと違うと思います。コンビの解散が相次いだとき、ある師匠が「まあ、また再結成あるかもしらんからな」と言っていて。世代によってだいぶ違うんやなと思いました。けっこう上の師匠方は解散しても、のちに再結成していますからね。漫才師の解散なんて、よくあることやでという感じなんでしょうね。
橋本 でも今の世代の芸人は「もっかい」はない気がするな。解散するときの感覚が「よくあることやで」ではないと思うので。