スポーツ

《貴景勝が大関陥落の名古屋場所もあと2日》【故・第37代木村庄之助が語った大相撲「行司」の世界】「立行司が腰に差す短刀の意味 所属は「相撲部屋」だが「行司会」定員は45人の“狭き門”

(時事通信フォト)

15日間にわたる熱戦がまもなく終わる(時事通信フォト)

 大相撲名古屋場所(7月場所)も残すところあと2日。13日目は直接対決となった横綱・照ノ富士がV10に王手をかける一方、9度目の角番だった大関・貴景勝の大関陥落が決まった。力士と同じ土俵に立ち、間近で取組を見守り、勝敗の判定を行っているのが「行司」だ。歴史と伝統に裏打ちされた、その他のどんな競技の審判員とも異なる独特の存在である。かつて「第37代木村庄之助」を務めた畠山三郎氏は2022年7月場所中に72歳で亡くなったが、『審判はつらいよ』の著者・鵜飼克郎氏は亡くなる数日前まで畠山氏を取材していた。鵜飼氏が、第37代木村庄之助が語り残した大相撲「行司」の奥深い世界を紹介する。(前後編の前編。文中敬称略)

 * * *
 大相撲の「審判」は誰か? 土俵上で東西の力士を合わせて取組を裁き、勝者に軍配を上げる「行司」と、多くの人が思うだろう。

 しかし、それは不正解だ。日本相撲協会の審判規則には「審判委員(勝負審判)」の定義があり、それは「相撲協会の審判部に所属する親方衆」のことである。協会HPでも審判部は「本場所相撲における勝敗の判定及び取組の作成も行なう部署」としている。

 行司は土俵上での勝負判定を任されているが、微妙な勝負で物言いがついた場合、発言権はあるが決定権はない。土俵を囲むように配された5人の審判委員に判定が委ねられる。

 実はその5人の審判委員たちは自分たちの目よりも「機械」を信じる。審判長がビデオ室に待機する審判委員に連絡し、ビデオ室では映像をコマ送りして勝敗を確認する。その結果が伝えられると、5人は土俵上から所定の位置に戻り、審判長が場内放送で勝ち力士をアナウンスする(「同体取り直し」の場合もある)。

 行司はそれに従って勝ち名乗りをあげるが、最初の判定と逆の結果であれば「行司差し違え」となる。大観衆の前で誤審を指摘され、自らそれを認める所作をしなければならないのだから、行司にしてみれば屈辱的な瞬間である。

(産経新聞社)

「第37代木村庄之助」を務めた故・畠山三郎氏(産経新聞社)

「実力主義」の行司は昇格するたびに名前が変わる

 中でも責任重大とされるのは、横綱の取組を裁く行司の最高位・立行司だ。立行司は左腰に短刀を差す。“差し違えたら切腹する”という伝統に基づいている。実際に切腹こそしないものの、差し違えた立行司は相撲協会に「進退伺」を提出しなければならない。

 その短刀について「第37代木村庄之助」の畠山三郎に訊いたことがある。畠山は少し困った表情でこう答えた。

「“そういう覚悟”で土俵に上がっているのであって、実際に判定を間違えるたびに切腹させられたら、たまったものではありませんよ(苦笑)」

関連キーワード

関連記事

トピックス

出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
《水原一平を待ち続ける》最愛の妻・Aさんが“引っ越し”、夫婦で住んでいた「プール付きマンション」を解約…「一平さんしか家族がいない」明かされていた一途な思い
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でハリー・ポッター役を演じる稲垣吾郎
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演、稲垣吾郎インタビュー「これまでの舞台とは景色が違いました」 
女性セブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反容疑で家宅捜査を受けた米倉涼子
「8月が終わる…」米倉涼子が家宅捜索後に公式SNSで限定公開していたファンへの“ラストメッセージ”《FC会員が証言》
NEWSポストセブン
巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン