(産経新聞社)

土俵中央で「土俵祭り」の祭主を務める第37代木村庄之助(産経新聞社)

 行司の序列は最高位の立行司から、最下位の序ノ口格行司まで8段階(高い順に、立行司、三役格、幕内格、十枚目格、幕下格、三段目格、序二段格、序ノ口格)。階級によって装束、履物、軍配につける房の色まで細かく規定されている。

 経験・実績に加えて軍配の正確さ、土俵上での作法、さらには土俵外での働きなど、さまざまな評価で番付が上がる。行司名はそれぞれの格ごとに決まっているので、昇格するたびに名前が変わっていく。力士の最高位である横綱の取組を裁けるのは「木村庄之助」と「式守伊之助」の立行司2人だけ。中でも木村庄之助は式守伊之助より格上とされ、担当するのは結びの一番のみ。力士でいえば“東の正横綱”に相当する。

 実力主義で出世していくので、最高位の木村庄之助が不在となることもある。結びの重要な一番を任せるに値しないと見なされれば襲名はできないのだ。立行司にも降格がなく、昇進の条件を満たす力士が誰もいなければ横綱不在となるのと同じである。

 実際、第37代木村庄之助の畠山が2015年に定年退職(65歳)して以来、木村庄之助は長く空席が続き、角界では後継者問題が悩みのタネになっていた(2024年1月に第38代が襲名)。

“選手”と“審判”が共同生活!?

 スポーツ競技の審判員は、当該競技団体に属しているか、競技団体から大会・試合ごとに打診・依頼されるパターンが大半だが、行司の世界は全く違う。

 行司になるための条件は「義務教育を修了した15歳から19歳未満の男性」だ。

 彼らが所属する“勤務先”は相撲協会ではなく、それぞれの相撲部屋である。昔は力士を目指して入門したものの体が小さいために行司に転身するパターンが多かったが、近年では最初から行司を志望する者が増えたという。

 相撲部屋に入門すると、履歴書や保護者の承諾書、部屋の親方の採用願などを揃えて協会に提出し、行司会と相撲協会の面接を経て協会員になる。ただし行司会には定員(45人)があるので、空きが出ないと採用されない。条件は緩いが、狭き門ではある。

 行司の新弟子は最初の1年間は行司会の役員である「行司監督」について行司の基本を教わる。その後の2年間は部屋や一門の先輩行司の指導のもと、さまざまな実務を実践で学ぶ。この3年間が養成期間にあたる。

 行司の給料は相撲協会から支払われるが、相撲部屋から“食”と“住”が提供されるため、幕下格までの月給は10万円足らず。それとは別に装束手当や場所手当が支払われる。

 昇格・昇給は年1回。毎年9月場所後に勤務評定があり、次の1年間の階級と待遇が決まる。基本的に年功序列だが、力士でいう関取格(十両以上)として扱われる十枚目格以上には22人の定員があるため、行司としての実力も考慮されるようになる。

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