スポーツ

【夏の甲子園「大番狂わせ」名勝負】1973年の銚子商vs作新学院 怪物・江川卓が力尽きた延長12回裏の粘り

篠塚に代わって出場した二塁手・長谷川泰之が押し出し四球を選んだ

篠塚に代わって出場した二塁手・長谷川泰之が押し出し四球を選んだ

 阪神甲子園球場100年の歴史に高校野球は欠かせない。なかでも印象に残るのは、高校野球ファンを「まさか!」と唸らせた“ジャイアント・キリング”だろう。1973年に怪物・江川卓を擁した作新学院(栃木)に挑み、延長サヨナラ勝ちした銚子商(千葉)ナインの戦いに迫った。

 * * *
 元祖「怪物」の名が冠せられた作新学院の江川卓は、1973年春の選抜で初めて聖地のマウンドを踏み、準決勝までの4試合で60もの三振を奪ってみせた。

「高校生であれほど速いボールは見たことがない。度肝を抜かれました」

 そう振り返るのは銚子商のOBにして、巨人で活躍した篠塚和典(当時は利夫)だ。作新と銚子商はその年に春の関東大会と練習試合で対戦。当時1年生の篠塚は、稀代の豪腕から1本ずつ安打を放っていた。

「自信にはなりましたけど、うち1本はどん詰まり。このボールをクリーンヒットできるようにならないと、プロにはなれないと思っていました」

 その夏の甲子園、両校は2回戦でぶつかった。だが、篠塚は千葉大会の直前、走塁練習中に3年生の二塁手・長谷川泰之の膝に右腕をぶつけ骨折。この試合はスタンドから江川と銚子商の2年生エース・土屋正勝(元中日ほか)との息詰まる投手戦を観戦していた。

「江川さんの直球は、ボールが垂れず、打者からしたら浮き上がってくるように感じるんです。シュート回転することもなく、みんなボールの下を振っていた。現代的にいえば、スピン量が凄まじかったんでしょう」

 雨脚が強まるなか、試合は両校無得点で延長へ。12回裏、銚子商は2つの四球と単打で一死満塁のチャンスを掴む。打席には篠塚の代わりに二塁に入った長谷川。疲労が隠せない江川から押し出しとなる3つ目の四球を選び、銚子商がサヨナラ勝利を手にした。怪物が力尽きた瞬間だった。

取材・文/柳川悠二

※週刊ポスト2024年8月9日号

関連記事

トピックス

実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン