兄・輝星に「結局似てきた」と話す吉田大輝

兄・輝星に「結局似てきた」と話す吉田大輝

「一緒にカナノウに行こう」と声掛け

 中学3年だった2年前の夏、筆者は秋田のとある強豪高校の関係者から「来年、吉田輝星の弟が金足農業に入学するようです。兄の時と同様、県内の有望選手が集まるとの噂です」という声を拾っていた。

 真相を聞くと、大輝が中学時代にネオグリッターズの仲間やライバルチームの選手に「一緒にカナノウに行こう」と声を掛けて回ったという。3番を任される外野手・藪田龍人もそのひとりだ。

「自分は進路を迷っていたんですけど、大輝が毎日電話をくれて。自分が折れる形でカナノウに決めました。ここに来て良かったです」

 現在の最速は145km/h。球種はカーブ、スライダー、フォーク、チェンジアップだ。同校の中泉一豊監督は兄弟を比較してこう評する。

「まだ2年生ですが、ストレートもお兄ちゃんと同じようなものを持っていますし、変化球に関してはお兄ちゃんよりも良いかもしれない。まだまだ大輝はのびしろがあると思います」

 あえて荒削りな部分があるとすれば、打者のタイプや状況によってムラがある点だろう。走者を背負った場面などではギアを入れ替え、打者がまるで手を出せない剛球をコーナーに投じる。しかし、下位の打者には簡単にストライクを取りにいって打ち返されてしまうこともある。

 ただ、猛暑に見舞われた決勝の日、老朽化が目立つさきがけ八橋球場には3万5000人が駆けつけ、3台しかない自動販売機には100mほどの列ができていた。秋田県民はカナノウ旋風の再来を大輝に期待している。そんな大輝の好きな言葉は、帽子に書き込んだ「夢」「恩返し」「天下」の3つだという。

「一番好きなのは兄がグローブに縫い付けてくれた『天下』です。将来はプロ野球選手になりたい」

──目標は高卒ドラ1?

「もちろん、そうなれば嬉しいです」

 まずは兄の果たせなかった甲子園での天下取りに挑む。

●取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)

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