7月4日土曜日の午後1時50分ごろ、香芝市のリサイクルショップに家族4人で訪れていた女子児童が「トイレに行く」と言い残し、北館から南館のトイレへ向かったあと、行方不明になりました。
容疑者の男は南館に隣接する駐車場に車を駐め、そこから歩いて数十歩のトイレで女子児童を拉致し、自分の車に乗せて隣の大和高田市の自宅に連れ去り、監禁していました。幸い女児は保護されましたが、一歩間違えば命が危なかったかもしれません。
女児が行方不明になったリサイクルショップ南館のトイレは、建物の裏手の奥まった場所にあったため、利用するには店を回り込む必要がありました。そこを出入りする人の様子は駐車場からよく見えました。男は車内から物色できるので怪しまれにくかったのです。このような施設は、犯罪者にとっては絶好の場所になります。
この場所を改善するなら、駐車場と、店舗・トイレのある建物の間にフェンスを設置して隔てることです。そうすれば、駐車場からトイレに行くにはフェンスを回り込まなければならず、そのぶんだけ人目につく可能性が高くなるので、犯行現場に選ばれにくくなります。さらにトイレの前に監視カメラを設置すれば、フェンスを回り込んでトイレまで歩いていく姿が映像に残ってしまいますから犯人は嫌がります。
こうした事件が起こらないようにするために、欧米では男子用トイレと女子用トイレが別々のところに設置されていることも少なくありません。建物の表側と裏側にあったり、通路を挟んで反対側にあったりします。男子用トイレと女子用トイレを別々の場所に設置すれば、女子用トイレの前を男がうろついていれば明らかに目立ちますから、犯行現場として選ばれにくくなるのです。
日本では、男女の入口が隣接していたり、入口がひとつで中で左右に分かれているという構造の公共トイレをしばしば見かけますが、これは犯罪者にとって「入りやすい」危ない場所にほかなりません。
【プロフィール】
小宮信夫(こみや・のぶお)/1956年。東京生まれ。立正大学文学部教授(社会学博士)。ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者でもある。現在、警察庁「持続可能な安全・安心まちづくりの推進方策に係る調査研究会」座長、東京都「地域安全マップ指導者講習会」総合アドバイザーなどのほか、全国の自治体や教育委員会などに、子どもを犯罪から遠ざける防犯アドバイスを行なっている。『犯罪は予測できる』(新潮社)など著書多数。
※小宮信夫・著『子どもは「この場所」で襲われる』をもとに再構成