原作のイメージを踏襲してデザインしていく
『どうする家康』だったら「人間家康」
──人物をデザインするといっても、独断ではできませんよね。監督やプロデューサーとは、どのように考えを擦り合わせていますか?
そもそもお話をいただくのが監督かプロデューサー、あるいは主役からなんですよね。それで、たいていは原作がありますし、原作がない場合でも脚本の原案はあります。
それでオファーが来て、「かくかくしかじかな、この方向の作品なんだ」というお話をいただいて「ああ、なるほど」ということになり、進めていきます。
──その段階では、監督やプロデューサーとはどのようなことを確認していますか?
どういう方向性の作品にしたいのかということですね。現実社会に対して、どのような提示をする作品にしたいのかがとても大切なので、そのメタ構造(現実社会を意識した物語の構成)を理解しないと。それを作品世界の中に縮図として成立させるのが自分の方法です。作品世界をその世界性だけで成立させる方もいらっしゃるかと思うんですけれども、僕はあまりそちらのほうじゃなくて、現実社会とリンクするメタ構造にしていく。そうしたコンセプチュアルな方向性を、第一弾の話し合いの中で感じるようにしています。最初の話し合いの中で「こういう感覚のことだな」ということを、ふわっとした空気感として得る。そして、プロットや箱書きのような状態のもの、あるいは、脚本の第一稿の段階になったところで、コンセプチュアルなワードを自分の中に決めていきます。
たとえば、『どうする家康』だったら「人間家康」という言葉を自分で決めていました。『龍馬伝』であれば「すぐ隣にいる人」というのがドラマ全体のコンセプトワードだったんですけど、そこに至るまでに「本当にいる人」という言葉を、まず出させていただきました。それで、大友啓史監督とお話ししながら固まっていったんですね。
──まずは言葉から入る、と。
言葉にしていくのはとても重要です。しかも、それは長い言葉ではなくて、ワンワードに近い、どんな方も覚えやすいような言葉にする。AIに対するプロトコルを決めるような感じですね。