指定暴力団山口組の司忍(篠田建市)組長にはスタイリストがついているという(時事通信フォト)

指定暴力団山口組の司忍(篠田建市)組長にはスタイリストがついているという(時事通信フォト)

認知症を心配する句は見かけない

 ここ数回の新報では妻にいびられ、邪見にされる自虐ネタがいくつも掲載されていたが、31号ではその手の川柳は見られなくなった。それより〈物価高 嫁のやりくり ブッダかな〉〈値上げだと? 家の家計 音を上げる〉など、自分たちの生活に直結する物価高を嘆く句が増えてきた。暴対法、暴排条例、特定抗争指定暴力団の指定にコロナ禍と続き、傘下組織の組員らにとって経済的には厳しい状況が続いているのだろう。

 ヤクザもそうなのかと思わせるものに〈にこやかに 腹の中では うっせえわ〉という句がある。パワハラありきのヤクザの世界では、上の者に口答えしたり反論することは不可能だ。できるのはせいぜい顔で笑って腹の中で舌を出すぐらいというのが、彼らの現実だ。〈お爺さん 都合悪いと ボケたふり〉という句もあり、どこの世界にいても年寄がやることは変わらない。ボケといえば、このコーナーでは健康に関する句は増えているものの、認知症を心配するような句は見たことがない気がする。彼らにとっても認知症は笑えるような話題ではないのだろう。

 そういえば30号の短歌・狂歌に、メディアに対するこんな句が載っていた。〈そのペンで 世直し掲げ人を斬る 昔は朝日今は文春〉。山口組関係者が以前、文春についてこんなことを言っていた。「ヤクザより 今怖いのは 文春砲」、有名人らにとっては確かにそうだ。

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