ライフ

【新刊】キャラに寄りかからない推理の端正さが渋い極上品 東野圭吾『架空犯』など4冊

政治家と元女優のセレブ夫妻が殺された。過去の層を剥がして五代刑事が辿り着く真相

政治家と元女優のセレブ夫妻が殺された。過去の層を剥がして五代刑事が辿り着く真相

 日に日に寒さが増している。温かい飲み物でも用意して、室内でゆっくりと読書を楽しんでみてはいかがだろう。おすすめの新刊を紹介する。

『架空犯』/東野圭吾/幻冬舎/2420円
 火事になった豪邸から都議の藤堂と妻で元女優の江利子の遺体が発見される。無理心中に見えたが、すぐ偽装だと判明。五代は所轄の山尾警部補と組んで捜査を進める。早めに容疑者が逮捕されるも、のらりくらりと自供する容疑者を、五代が足で稼いだディテールで反証的に追い詰めていく過程がスリリング。シリーズ2作目。キャラに寄りかからない推理の端正さが渋い極上品だ。

野球と同じくらい夢中になれることを見つけたカッコイイ男達

野球と同じくらい夢中になれることを見つけたカッコイイ男達

『道を拓く 元プロ野球選手の転職』/長谷川晶一/扶桑社/1650円
 アスリートの現役時間は短め。14人のセカンドキャリアの場を訪ねる。保育園、讃岐うどん店、警視庁機動隊、いちご農家、大学、カフェなど、職業図鑑みたいな多様さに目を見張る。選択の動機はそれぞれ。子供大好き、昔から教育者志望、パティシエになって母経営のカフェを応援。子供達にも読ませたい。アスリートって一粒で二度美味しい人生が味わえるみたいだよって。

怪談と言えば「耳なし芳一」という世代にも進化したホラー地図が見えてくる解説書

怪談と言えば「耳なし芳一」という世代にも進化したホラー地図が見えてくる解説書

『ネット怪談の民俗学』/廣田龍平/ハヤカワ新書/1276円
 最近ホラー小説には廃墟や心霊スポットを実況するVチューバーが登場する。物語よりも送り手と受け手で「不穏」を共有するスタイルなのだとか。恥ずかしながら「きさらぎ駅」とか「リミナルスペース」とかチンプンカンプン。それでも面白く読めたのは学者らしく冒頭で全体地図を掲げ、学者らしくない分かりやすい文章で書かれていたから。来年の新書大賞にランクインしそう。

イバりん坊で淋しがり屋でお人好し。手紙魔・一郎が会得した恋文のコツとは?

イバりん坊で淋しがり屋でお人好し。手紙魔・一郎が会得した恋文のコツとは?

『恋文の技術 新版』/森見登美彦/ポプラ文庫/869円
 能登の実験所に飛ばされた京都の大学院生・守田一郎。希代の文通上手を目指し、恋煩いの親友や女王様気質の女性先輩、兄を尊敬しない妹や、森見登美彦という作家に恋文の教えを請う手紙などを出しまくる。相手の返信内容を織り込んだ一郎の手紙だけでほぼ構成。素直すぎる無礼さと憎めない甘えん坊ぶりに終始笑い転げる。人気のロングセラー作の新装版。楽しいですよ。

文/温水ゆかり

※女性セブン2024年12月5日号

関連記事

トピックス

不倫が報じられた錦織圭、妻の元モデル・観月あこ(時事通信フォト/Instagramより)
《結婚写真を残しながら》錦織圭の不倫報道、猛反対された元モデル妻「観月あこ」との“苦難の6年交際”
NEWSポストセブン
国民民主党から参院選比例代表に立候補することに関して記者会見する山尾志桜里元衆院議員。自身の疑惑などについても釈明した(時事通信フォト)
《国民民主党の支持率急落》山尾志桜里氏の公認取り消し騒動で露呈した玉木雄一郎代表の「キョロ充」ぷり 公認候補には「汚物まみれの4人衆」との酷評も出る
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
「松井監督」が意外なほど早く実現する可能性が浮上
【長嶋茂雄さんとの約束が果たされる日】「巨人・松井秀喜監督」早期実現の可能性 渡邉恒雄氏逝去、背番号55が空席…整いつつある状況
週刊ポスト
発見場所となったのはJR大宮駅から2.5キロほど離れた場所に位置するマンション
「短髪の歌舞伎役者みたいな爽やかなイケメンで、優しくて…」知人が証言した頭蓋骨殺人・齋藤純容疑者の“意外な素顔”と一家を襲った“悲劇”《さいたま市》
NEWSポストセブン
6月15日のオリックス対巨人戦で始球式に登板した福森さん(撮影/加藤慶)
「病状は9回2アウトで後がないけど、最後に勝てばいい…」希少がんと戦う甲子園スターを絶望の底から救った「大阪桐蔭からの学び」《オリックス・森がお立ち台で涙》
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《浅田真央と村上佳菜子が断絶状態か》「ここまで色んな事があった」「人の悪口なんて絶対言わない」恒例の“誕生日ツーショット”が消えた日…インスタに残された意味深投稿
NEWSポストセブン
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン