芸能
菅原文太と「仁義」の時代

【菅原文太さん没後10年】何度も共演した誠直也が回顧「“怖い人”に囲まれた時、菅原さんの凄みを見た」

俳優の誠直也が菅原文太さんの魅力を語る

俳優の誠直也が菅原文太さんの魅力を語る

 菅原文太さんが亡くなって10年が経った。いまも人々を魅了する菅原さんの魅力を、『トラック野郎 天下御免』などで共演した俳優の誠直也が語った。

 * * *
 俺と菅原さんの出会いは、菅原さん主演の『現代やくざ 血桜三兄弟』(1971年)。その地方ロケでの酒宴が縁で、いろいろ何かあると声をかけて呼んでもらった。

 無条件にカッコいい人ですよ。役柄と違って静かな人で、単行本を読みながら、好きな酒を脇に置いてね。

 どんな時もバタつかない。それなりの修羅場になると、普段はイキがっていても、ばたつく人は多い。でも、菅原さんはなんともない。くそ我慢強いというか、意地っ張りというか、とことん腹が据わっている。

 大阪で二人でいる時に、大勢の怖い人たちに暗闇で囲まれた時もね、俺は、もしなんかあったら──と思うんだけど、菅原さんは「この人はなんなの」っていうくらい落ち着いてるんだよ。「なんだ、この野郎!」って因縁つけてくる連中にも笑いながら動じない。そのうちに相手は退散する。そんな場面を何度も見たね。

 そういう意地の通し方は何に対しても同じだった。菅原さんは新東宝から松竹に移り、それから東映に来た。東映の生え抜きじゃないから、苦労もしたんじゃないかな。

 たとえばスターさんが来たら会社は車を用意するじゃない。でも用意されていなくても菅原さんは涼しい顔をして、地下鉄に乗って帰ったんだよ。そんな時にやっぱり腹が据わっているなと思った。タクシー代がもったいなくて電車に乗るんじゃなく、菅原さん独特の“我慢の美学”だったと思う。

 それは自分に対して決めごとがあったからじゃないだろうか。そういうものすべてが菅原さんの演技や存在感になっていたと思うね。それでスターになったんだと僕は思っている。

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