芸能

高田文夫氏が振り返る“お世話になった”山藤章二さんの思い出 突然訪ねてきて「あなたの落語を生で聞きたい。紀伊國屋ホール押えてきました」

山藤章二さんの思い出(イラスト/佐野文二郎)

山藤章二さんの思い出(イラスト/佐野文二郎)

 放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、「立川藤志楼vs高田文夫 ひとり時間差落語会」をプロデュースした山藤章二さんについて綴る。

 * * *
 人間には誰でも「あの人にはお世話になった」としみじみ思う人物が2人や3人はいる。私にとってそれが山藤画伯、山藤章二ブラックアングル先生であった。

 1980年にとんでもない“漫才ブーム”という嵐がきてテレビは1970年代大当たりした“歌謡曲の時代”から1980年“笑いの時代”へと変換した。『THE MANZAI』『オレたちひょうきん族』。今話題のフジテレビで私が忙しくとび回っていた時代だ。お台場なんかへは行かない、河田町(曙橋)のいい時代だ。

 笑いの番組を仕切っていた横澤彪プロデューサーが「これで漫才は大丈夫だ。高田ちゃん、次は落語家を何とかしなくっちゃ」と宿題を出され、私は私の企画・構成・司会で深夜『らくごin六本木』をスタートさせた。古くさい噺家というイメージを一新するため、若者が集まる六本木俳優座で収録。いまのセンスを持っている若手落語家が毎週2名で2席。小遊三、米助、楽太郎(のちの円楽)、志ん三(志ん五)、左談次、歌之介(のちに円歌)たちだ。

 それでも3年4年やると番組も息切れ。その時横澤Pや佐藤義和Dから「もうこうなったら高田ちゃんがやるしかないでしょ。学生時代相当ならしたと聞いてるよ」。調子に乗りやすい私はこの番組でおよそ10年ぶりに古典落語にいまをまぶしたとんでもない落語を一席。

 放送の翌日、事務所で原稿を書いてると“ピンポーン”。開けると背の大きい人「あっこの人見たことある」と思ったら「山藤です。昨晩とっても面白かった。あんな15分や20分じゃなくてタップリ生で聞きたいと思って」「はぁ?」「独演会やりましょう。いま紀伊國屋ホール押えてきました」。

 自分が1時間も2時間もききたいからとあの聖地紀伊國屋ホールを借りてしまうとは。かつて私が若き日「談志ひとり会」がここで開催されていて、せっせと通った場所だ。

 以来10年にわたり全10回。山藤章二プロデュースで「立川藤志楼vs高田文夫 ひとり時間差落語会」は圧倒的うけ方でゴールデンウィークの新宿の風物詩となった。山藤先生のご指名でいつも小遊三&米助はコンビ芸「漫才」やら「太神楽」「手品」などを見せた。キッチュだった松尾貴史は『朝まで生テレビ!』の一人パロディ大島渚、田原総一朗、野坂昭如らの思想模写で大喝采。若き談春は出てくれたり楽屋裏をあれこれ手伝ったり。

 そんなメンバーが一夜揃い、昨年亡くなった先生を明るくしのびます。「寄席山藤亭」。2月25日(火)、チケットはイープラス他で。

※週刊ポスト2025年2月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
維新に新たな公金還流疑惑(左から吉村洋文・代表、藤田文武・共同代表/時事通信フォト)
【スクープ!新たな公金還流疑惑】藤田文武・共同代表ほか「維新の会」議員が党広報局長の“身内のデザイン会社”に約948万円を支出、うち約310万円が公金 党本部は「還流にはあたらない」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《ほっそりスタイルに》“ラブホ通い詰め”報道の前橋・小川晶市長のSNSに“異変”…支援団体幹部は「俺はこれから逆襲すべきだと思ってる」
NEWSポストセブン
東京・国立駅
《積水10億円解体マンションがついに更地に》現場責任者が“涙ながらの謝罪行脚” 解体の裏側と住民たちの本音「いつできるんだろうね」と楽しみにしていたくらい
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン