松坂桃李と岡田将生(松坂桃李の公式Xより)

松坂桃李と岡田将生(松坂桃李の公式Xより)

『金八先生』大ヒットの“弊害”

 第2話(1月26日放送)の中盤、松坂の好演が話題になったシーンがあった。生徒の様子を気にかけた副担任役の吉岡が、フォローが必要なのでは、と松坂に相談した場面だ。

 松坂は「こんな話があるんです。とある有名な学園ドラマの新シリーズが始まるたびに、日本中の学校が荒れて、学級崩壊を起こす」と切り出し、「(そのドラマが)生徒のために奔走するスーパー熱血教師以外は教師にあらず、という空気を作ってしまった」と言い放った。

「ドラマ名こそ伏せられましたが、学園ドラマの名作『3年B組金八先生』シリーズ(TBS系)を指しているのは明らかでした。“教育のあるべき真の姿を描く大逆転教育再生ストーリー”と銘打つ『御上先生』からの、強烈なメッセージでした」(テレビ局関係者)

「御上先生」にはモデルとなった教師がいる。同作の「学校教育監修」にも携わる工藤勇一氏(65才)で、“金八批判”をメディアで公言してきた教育者だ。

「金八先生の“弊害”で生徒に過剰に寄り添う教員が増え、当時の工藤氏は子供たちは与えられることが当たり前になったと実感したようです。生徒の目線に立つことは大切です。でも、教師は導くのが仕事で、一から十まで答えを与えればいいわけではありません。行きすぎがあると、生徒は自分で考えなくなってしまう。自らの意思で行動する主体性を失った子供の増加に危機感を覚え、教育現場の改革が必要だと痛感したそうです」(教育業界関係者)

 山形県と東京都の公立中学校で教鞭を執りながら少しずつ教育改革を進め、教育委員会で10年ほど行政に携わった工藤氏。2014年に着任した千代田区立麹町中学校(東京)の校長時代には、400項目以上の教育改革を実行して全国から注目された。

「なかでも“すごい”と話題になったのは、“学校の当たり前をやめた”改革でした。例えば、提出することが目的になっていた宿題をなくし、知識の一時的な詰め込みが目立つ定期テストを廃止しました。生徒は勉強が必要なポイントを自ら探すようになった。主体性を重視したことで、結果的に多くの生徒の学力が上がったんです」(前出・教育業界関係者)

 学習面に留まらず、工藤氏は組織にもメスを入れた。そのひとつが固定担任制を廃止し、学年の全教員で生徒を見る「全員担任制」の導入だ。生徒が相談する教員を自由に選べることで、仮にトラブルが発生しても、解決につながるケースが劇的に増えたという。以降、工藤氏の改革を参考にする学校が相次いだ。

 麹町中学校で校長を6年間務めた工藤氏は、2020年に定年で退職。その後は神奈川県の横浜創英中学・高校の校長を2024年3月まで務め、現在は教育アドバイザーとして全国で講演活動を行っている。

 御上先生を演じるにあたり、松坂はモデルとなった工藤氏の授業を実際に受けたという。

「生徒の主体性を育むことを第一に考える工藤氏の教育方針に、松坂さんは深く共感していました。だからこそ“有名な学園ドラマ”を例に挙げて問題提起したシーンは、視聴者に響いたのかもしれません。御上先生を演じる際、松坂さんは工藤氏の口調やしぐさを参考にしているそうです」(前出・ドラマ関係者)

『金八先生』が当時の教育現場に大きな影響を与えたように、『御上先生』の振る舞いが令和教育のスタンダードになる日が来るのかもしれない。

女性セブン2025213日号

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