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厚生労働省が医師を対象に美容医療の実態調査、皮膚科や形成外科のほか内科、外科など「基本領域」学会所属医師が対象、美容医療と保険診療の行き来を見える化

厚生労働省(picturedesk.com/時事通信フォト)

厚生労働省(picturedesk.com/時事通信フォト)

 医師が、病気の診断や治療などを行う保険診療から、美容医療に進むケースが増えている。厚生労働省では2024年に美容医師の増加の問題が議論されたが、同省が2025年2月、幅広い専門分野の医師を対象に美容医療の経験を調べる調査を開始した。

「医師偏在」対策を進める厚生労働省

 この調査はまずアンケートから始まり、医療の基本的な分野と見なされている「基本領域」の学会に所属する医師を対象にして調査が始まった。基本領域とは内科や外科のほか、皮膚科、形成外科、救急などの分野が当てはまる。

 こうした基本領域の学会に所属する医師は、専門医の資格を取得して、それぞれの分野の診断や治療が難しい病気の診療に当たることになる。

 それに対して、最近では、美容医療に関連する分野以外の専門を持つ医師でも美容医療に進むことが増えているとされる。

 美容医療に進む医師のトピックスとしては、医学部卒業後、2年間の初期研修を経て直接美容医療に進む「直美」がよく問題に挙がるが、ある程度、保険診療を経験した後に美容医療に進む医師の増加も、専門性の高い医師が不足しがちな現在、問題と認識されている。

 国内では、こうした問題は「医師偏在」の問題として対策が進んでいる。そこで、厚労省は専門医に密接に関連する基本領域の学会所属の医師を対象にしたアンケートに着手した。

 調査名称は、「医師の診療科偏在対策の検討に資する美容医療に従事する医師及び合併症等の治療に係る実態調査」となっており、医師と合併症の実態を把握することが大きな目的になっていると理解できる。

 アンケートでは、医師の保険診療と美容医療の経験、美容医療に移った理由や満足度、逆に保険診療に移った理由や満足度などを聞いており、保険診療と美容医療の行き来がどのように行われているかが問われている。対面調査に協力する医師についての質問もあり、今後、対面調査も行われると見られる。

 アンケートの締め切りは2025年3月14日となっており、調査期間は比較的短い。2026年には美容医療に進む医師を規制する対策の一環とされている「管理者ルール」が始まるなど、美容医療に関連する対応が進む中で、早期に情報を集めたい狙いを汲み取ることができる。

美容医療に多様な医師が進む実態が見えない

 この調査について、ある報道では「美容医療から保険診療に移行した実態」を調べると伝えていた。基本領域の学会を対象にしたアンケートなので、そのような目的と理解されたと見られるが、これは誤解だろう。

 ここまで書いた通り、美容医療では、基本領域の学会に所属して、必ずしも美容医療と関係があるわけでもない専門性を持つ医師が、美容医療に進むことが問題視されている。つまり、保険診療から美容医療、美容医療から保険診療という双方の実態を調べることが目的となっていると理解するのが正しいだろう。

 美容医療に多様な医師が関わっているにもかかわらず、その全容が見えないことが大きな問題になっている。

 今後、アンケートを経て、美容医療に当たる医師の実態や、その経験についての情報が明らかになってくると考えられる。こうした結果を利用して、美容医療をより良くしていくことが重要になる。

参考文献

(厚生労働省)適切な美容医療の実施に向けた取り組みに関する美容医療に係る従事経験のある医師に対するアンケート調査について

美容クリニック選びの新しいポイントに?2026年から「管理者」のルール、自由診療には関係ないとされても注目か、医療法改正案で制度が変わる【編集長コラム】

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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