『現代の主役』「ウルトラQ のおやじ」(HD リマスター版)より。怪獣による円谷英二のインタビューの様子

『現代の主役』「ウルトラQ のおやじ」(HD リマスター版)より。怪獣による円谷英二のインタビューの様子

 この作品で有名なのが、円谷英二の対談シーンだ。対談相手はなんと怪獣たちだ。

「それも『狙われた街』ですよね。応接間で人間と怪獣がテーブルを挟んでお茶をしながら話をしている。それがメトロン星人のアイデアにつながったんでしょうね」

現代に通ずる実相寺昭雄哲学

 佐井は実相寺監督の姿勢を「自分のルールを信じている」と評し、「それがかっこいい」と語る。

「それって、すごく孤独なことだし、勇気がいることです。どうしても実相寺昭雄というとクールな、端に構えた、王道のパターンから外れた『ウルトラマン』の名作回のイメージがありますが、初期のドラマを見るとものすごく熱い青年だったとわかります。

 クリエイティブに対して誠実で熱い人だからこそ、長く第一線で活動できたのだと思います。今のように多様なプラットフォームがある時代こそ、個々の哲学が求められているんじゃないかと、実相寺の20代の頃の仕事を観て感じました」

「TBSレトロスペクティブ映画祭 実相寺昭雄特集」は、テレビの黎明期に挑戦的な表現を貫いた一人の映像作家の軌跡を辿る、貴重な体験となるはずだ。

後編に続く

*「TBSレトロスペクティブ映画祭 実相寺昭雄特集」5月2日(金)Morc阿佐ヶ谷ほか順次ロードショー! 最新情報は公式Xをご確認ください。

https://x.com/tbs_retro

【プロフィール】佐井大紀(さい・だいき)/2017年TBSテレビ入社。ドラマ制作部に所属。連続ドラマのプロデューサーを務める傍ら、ドキュメンタリー映画『方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~』『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』を監督している。

◆取材・文 てれびのスキマ/1978年生まれ。ライター。戸部田誠の名義での著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イーストプレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)、『史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記1980-1989』(双葉社)、菅原正豊との共著に『「深夜」の美学―『タモリ倶楽部』『アド街』演出家のモノづくりの流儀』など。

撮影/槇野翔太

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