『盗るな撮れ~罪と少年とケーブルTV~』が日本民間放送連盟賞の番組部門で「優秀」作品に選ばれた
高卒ほどの給料で飛び込みで営業に行って仕事を増やしたりして、地上波のレギュラーやBSよしもとでやっている『ビスケットブラザーズの行けばわかるさ! ~三重街道中ひざくりげ』などを本名の林龍太郎として監督を務めて出演もしています。他にはハンドボールやVリーグチームの公式YouTubeチャンネル、スタジアムDJ、ドローンの空撮調査なんかもやりましたね」
──「稲沢CATV」に勤務して約10年。現場の実質的な責任者となった室田さんは、少年院から出てきて自立しようとしていた当時17歳の少年と出会いました。室田さんは少年を雇い、その様子が地元のテレビ局CBCで密着され、ドキュメンタリー『盗るな撮れ』と放送され話題となりました。
「若い子を採用してもすぐに辞めていくので、荒波に揉まれてきた少年を雇うのはどうだろうかと考えました。当時17歳の少年は、夜に商業施設のロッカーに隠れて警備員がいなくなってから盗みを働きました。単独犯で数千万円を盗んだ窃盗罪でした。犯罪は決して許されることではないけど、単独でそれだけのお金を盗む行動力はもしかしたら違う方向へ行けば化ける可能性はあると思ったのです」
──非行少年を採用するに当たって、社内でも反対の声があったそうですね。
「そういった声も当然ありましたが、本人の意思もあり、自分が頭を下げて採用しました。ただ、あえて彼を厳しい環境に置いて、過去の悪い仲間との連絡を絶たせるために1年間はスマホを持たせない約束をしました。
判決で決まった280万円ほどの返済もあり、会社で銀行口座と通帳も管理しました。彼は街でインタビューなどもできるようになり、カメラを器用に使いこなして仕事を覚えるのは早いほうでした。
テレビの取材では当初、顔にボカシがかけられていましたが、“僕は今、罪を犯していないのでボカシを外してくれませんか”という要望で途中からはボカシが外されて素顔を出しましたね」
──少年の返済額も残り120万円となったとき、事件が起きました。