横山剣(よこやま・けん)/1960年、神奈川県生まれ。1981年にクールスRCのヴォーカル兼コンポーザーに抜擢されデビュー
ひばりさんの後ろで泣いた紅白
横山:岩崎さんの数あるレパートリーの中でも、ここ数年、とりわけ注目を浴びているのが『Street Dancer』。シティポップの隠れた傑作として、世界中のリスナーが愛聴しています。
岩崎:1980年に発売したアルバム『WISH』の収録曲ですね。
横山:作詞は橋本淳さん、作編曲は筒美京平さん。歌謡界のゴールデンコンビが生み出した極上のAORです。
岩崎:この間、ダンサーをやっている友達が、私に『Street Dancer』を聴かせながら尋ねるんです。「この曲、すごく素敵なんだよね。知ってる?」って。「それ、私が歌ってるんだけど」と教えたら、驚いてました(笑)。
横山:先入観なしに惹かれたんだから、その出来事は名曲の証ですよ。
岩崎:確かに、そうかも。
横山:今月、岩崎さんはデビュー50周年を迎えました。歌謡界で、この人はすごい歌い手だと思った方というと?
岩崎:たくさんいますよ。まずは伊東ゆかりさん。どうやったら、呼吸でもするように、あんなに自然体で歌えるんだろうと驚いちゃう。一切気負いがないんですよ。
横山:生まれ持ったセンスなんでしょうね。
岩崎:ちあきなおみさんも凄かった。何歌ってもカッコよく、神様みたい。
横山:声が素晴らしい。唯一無二の歌手です。
岩崎:そして、美空ひばりさんですね。ある年の紅白歌合戦では、ひばりさんの後ろに紅組の他の歌手が並んで手拍子を打ったんですが、みんなひばりさんを観ながら、泣いてるんですよ。
横山:ただひたすら圧倒されちゃうんですね。
岩崎:演歌の文脈で語られがちなひばりさんですけど、リズム感も抜群にいい。天才ですよ。
横山:そうそう。『お祭りマンボ』の歌唱のグルーヴなんかには、ブラックミュージックに通じるものを感じます。
岩崎:ひばりさんがジャズを歌ったアルバムも、圧巻ですしね。音程はもちろん、発音も完璧で、とても英語を読んだり、話したりできない日本人シンガーが歌っているとは信じられません。