2022参院選で国民民主党は東京選挙区で候補者を擁立できなかった。小池都知事(右)率いる都民ファーストの会候補者の応援演説に立つ玉木氏(2022年6月撮影:小川裕夫)
議席数以上に、国民民主党の限界を表していたのが東京選挙区だった。前述した議席を減らした2022年の参院選では、同選挙区で候補者を立てることができなかった。もっとも、協力関係にあったファーストの会から荒木千陽氏が出馬しているので、共倒れを防ぐために擁立を見送ったという解釈も成り立つ。だが、今夏の参院選では2人も擁立する予定なのだから、それらを考慮すれば独自候補者を擁立できなかったと考えるのが自然だろう。
また、2024年4月に実施された東京15区の衆院補欠選挙でも、国民民主党が東京の選挙に弱いことを露呈してしまった。この補選は無所属で出馬した乙武洋匡候補(国民民主党、都民ファーストの会推薦)を小池都知事が全面的に支援したことが話題になったが、落選。当選した立憲民主党公認の酒井菜摘氏とはダブルスコア以上の票差をつけられている。
このように長らく支持が伸び悩んでいた国民民主党は、事態を打開しようと様々な試みを続けた。
2024年7月に実施された東京都知事選で165万票を獲得するという予想外の躍進をとげた石丸伸二・元安芸高田市長に玉木代表が接近しはじめたときは、その大胆さに驚かされた。
言うまでもなく、石丸氏は小池都知事と争った間柄であり、端的に言えば政敵でもある。玉木代表は小池都知事との関係を強化していた一方で、石丸氏とネット番組で共演するなど仲を深めていった。
そして、きわめつきが2024年10月26日、衆院選の最終日だった。玉木代表は選挙戦のマイク納めを東京駅前で予定していたが、到着が遅れていた。そのため、開始時刻になっても街頭演説は始まらなかった。そこに、たまたま通りがかった石丸氏が街宣車に登壇してマイクを握るというハプニングが起きる。
どういった経緯で石丸氏が街宣車の上でマイクを握ったのかは定かになっていないが、政党人だったら選挙戦最終日に公党の選挙カーに乗せることがどういった意味を含むのかを理解しているはずだ。国民民主党が石丸人気にあやかろうとしていたことは否めない。
これまで共闘関係にあった小池都知事は選挙戦を通じて国民民主党候補者の応援に入らなかったが、公明党の候補者を中心に応援演説に駆け回っていた。だからといって、都知事と国民民主党の縁が切れてしまったのかというと、そうでもないのが不思議なところで、玉木代表は都知事という巨大権力の座を争った小池・石丸の2人と距離を同時に縮めるという離れ業をこなした。その結果、支持を急拡大させることに成功した。