番組MCを務める村上信五とマツコ・デラックス
「この人は大丈夫か」個人の判断に依存
難しさが感じられるのは、インタビューを受ける人のすべてがこのような演出を「おいしい」「もっとイジって」などと思っているわけではないこと。笑顔でインタビューに答えていても、あとで「実はあまり言いたいことではなかった」「乗せられて余計なことまで言ってしまった」「家族や会社に迷惑をかけるかもしれない」などと感じることもあり得るでしょう。実際、屈指の人気キャラである投資家・桐谷広人さんですら、番組に感謝する一方で「意に沿わない放送をされる」などと不満を漏らした記事もありました。
さらに、スタッフが1度会って数分話しただけの相手に対して、「この人は大丈夫そうだから笑い声をかぶせよう」「この人は苦情のリスクがありそうだから放送をやめよう」などと個人の判断に依存する危うさも感じられます。
「街頭インタビューで面白い一般人をピックアップする」というコンセプトは問題ないとしても、笑い者にするような演出を変えるのか、変えないのか。たとえば、コメントに笑い声をかぶせて取材協力者を笑い者にするような演出だけでも改善できるのか。今回のねつ造のような編集は言語道断ですが、この根幹が変わらない限り、リスクと隣り合わせの番組なのでしょう。
そもそもテレビ番組には“放送の尺”がある以上、「コメントの切り取りは100%に近いレベルで行われる」というのが現実。今回ほど不適切な編集はされなかったとしても、「自分のコメントがネット上で炎上する」というリスクがある以上、取材を受ける側も慎重な受け答えが必要な時代になったのかもしれません。
同時に視聴者としてそれを見る人々も、「コメントの切り取りはあるもの」「演出で大げさになっているところもある」「自ら笑われることを望んでいるのだろう」という前提で気楽に見るほうがいいのでしょう。
また、今後は「時に『特に面白くないな』『へえ~、こういう人がいるんだ』というレベルのコメントが入っているか」も今後の番組を見る基準の1つになっていくのではないでしょうか。これまでの『月曜から夜ふかし』は、笑いの手数や撮れ高を追求することがスタッフのプレッシャーにつながり、それが今回の不適切な編集を招いた感がありました。