不適切な編集を行い、番組内で謝罪をした『月曜から夜ふかし』(番組公式HPより)
不適切な編集を行っていたことが明らかとなり、問題となっている『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)。番組内で謝罪を行ったが、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会の審理は続いている。再発防止策は示されたものの具体性に乏しく、番組存続を危ぶむ声が上がっている。番組作りの課題や、存続の鍵を握るポイントについてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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12日に放送された『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)の最後に、「3月24日、不適切な編集をしたインタビューを放送してしまいました。視聴者の皆様の信頼を裏切ってしまい、心よりお詫び申し上げます。これまで街頭インタビューを停止し、再発防止策を作ってまいりました。今後は、再発防止策を徹底し、街頭インタビューを行っていきます」というテロップとナレーションが流れました。
あらためてこの問題を振り返ると、事の発端は3月24日の放送回。中国出身女性のコメントを「中国ではみんなカラスを食べている」という印象を持たせる意図的な編集をしたことが発覚しました。しかし、制作サイドは謝罪文書を公表したのみで番組内では言及せず、放送は続行されていたのです。
4月14日には放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が審理入りを発表。しかし同日夜には『日本の大大大問題春の全国一斉調査2時間SP』を大々的に放送したことが物議を醸しました。制作サイドは新規の街頭インタビューを自粛して、過去の映像を再編集したものを放送していましたが、次回以降は「再発防止策を施した上で通常放送に戻る」ということでしょう。
しかし、今回はこれで事が終わるかと言えば、難しいところがありそうです。「まだBPOによる関係者へのヒアリングが行われている最中であること」「番組内での謝罪まで1か月半以上の時間を要したこと」「『これまで『どんなチェック体制で、これからどんなチェック体制に変えていくのか』などの具体的な経緯が明かされていないこと」「『フリーのディレクターを辞めさせて終わりにするトカゲのしっぽ切りではないか』と疑われていること」などの理由から、街頭インタビュー再開を問題視する声も少なくありません。
そんな予断を許さない状況が続く中、どこに注意しながら制作していくのか。何らかの変化はありそうなのか。一方、私たち視聴者はどこに注目して見ていけばいいのか。今回の問題に限らず賛否両論ある人気番組だけに、存続におけるポイントを掘り下げていきます。
一般人を笑い者にするような演出
『月曜から夜ふかし』は放送時間の大半を街頭インタビューが占め、「いかに面白いエピソードを引き出し、笑いを誘う編集をするか」を追求することで人気を獲得してきました。
ただ時折、ネット上で問題視されてきたのは、「一般人を笑い者にしすぎではないか」という演出。謝罪コメントを流した12日の放送でも下記のような演出がありました。
八丈島で漁師の「東京でユニクロの爆買いをすると中国人に間違われちゃう」というコメントに笑い声をかぶせる。八丈島に帰る人のキャリーケースにお土産のケンタッキーフライドチキンが8箱入っていて、MCの2人が「アハハ」「おかしいやろ」と笑う。福江島で「映画『ドラえもん』のDVDを島民みんなで奪い合う」というコメントに笑い声をかぶせる。沖縄本島の海で泳ぐスキンヘッドの男性に「絵に描いたような海坊主」というナレーションをかぶせる。
1人暮らしの女性宅をスタッフが訪ねて冷蔵庫を開けてもらい、「酒ばっか」「全部ロング缶」とツッコミを入れる。公園のベンチでグルメ漫画をつまみに酒を飲む高齢者に笑い声をかぶせる。高齢者の家に訪問して話を聞きながら、腹や乳首が見えることを「タンクトップのずらし方がプロ級」とナレーションでイジる。
「BPOの審議入りという厳戒態勢の中、あえてピックアップした映像」だからこそ、このような演出が番組のスタンダードである様子がうかがえます。
最近の放送でも、高齢者の言い間違いや地方在住者の方言に笑い声や効果音、ツッコミのテロップやナレーションを入れるなどの演出が多く、過去には運動音痴や滑舌の悪い女性を笑うようなコーナーもありました。良くも悪くも「一般人を笑いものにする」という演出のベースを変えなければ、今後も「バカにしすぎ」「そんなつもりではなかった」などと抗議を受けるリスクと隣り合わせでしょう。