運転する北村さん(運転免許証は2024年に返納)
89歳という年齢を感じさせず、精力的に芝居と向き合う北村さん。元気の秘訣はどこにあるのだろうか。
「好きなことを思いっきりやって、どうすれば健康になるか、なんて考えないことですね。だから、あえて秘訣があると考えれば、酒とタバコをずいぶん前にやめたことかな。酒は飲めない体質なんですけど、芥川比呂志(享年61)という劇団の素敵な先輩がいて、よく飲む人だったんです。その先輩に、僕はものすごく憧れていたものだから、若い頃は“芸術家というのは酒を飲むものだ”と思い込んで、真似をして無理に飲んでいたんです(笑)」
「僕の人生は病との戦い」
「あと、“体調が変だな”と思ったら、積極的に病院にかかりました。それが大病でも早期発見につながり、良かったのだと思います。思い返せば、僕の人生は病との戦いの連続なんですよ」
北村さんはもともと気管支が弱く、30代からはC型肝炎で苦しんできた。
「C型肝炎は幼い頃に受けた予防接種が原因だと思います。当時は注射器が使い回されていましたから。症状としては、すぐ熱が出て、全身が倦怠感に襲われる。酷いときは、“地面に吸い込まれるんじゃないか”というほどでした。
74歳で治るまではそんな症状に苦しんでいたので、テレビ出演で忙しかったときは、本当につらかった。当時の劇団は僕が稼ぎ頭だったし、“自分がテレビに出ることで劇団の舞台にお客さんを呼べる”と思って、一生懸命だったんですよ。でも、無理しすぎて、大病につながっちゃったんだね」
78歳のときには前立腺導管がん、2年前にはすい臓がんを発症した。ほかにも、心臓や胆のう、肺、声帯……と、立て続けに病に襲われた。その度に打ち勝ってきたが、ひょうひょうとした北村さんのイメージからは意外な闘病生活だった。つらい状態で出演したドラマのなかには、「消したい過去」と思う作品もあるという。しかし、出演作のDVDやビデオテープは、どれも大切に保管している。