夫人で劇団昴の女優・磯辺万沙子さんとの2ショット
夫婦の出会いは
劇団の先輩・後輩として出会った2人は、1987年、北村さんが52歳になる年に結婚した。夫人は22歳も年下。2人の距離が近づいたきっかけは、北村さんの病だった。
「彼女がたまたま僕の家の近くに住んでいたので、僕が入院したときに着替えを運んだり、洗濯をしたり、といった世話をしてもらったのがきっかけです。親子のシャム猫2匹を飼っていたので、その猫たちの世話もしてくれました。ところが、彼女、ぜんそくで入院してしまった。猫アレルギーだったんです。そんな思いまでして世話をしてくれるなんて……と、心を動かされました」
照れながら、そう話す北村さん。偶然の機会から2人は結ばれたが、相性はバツグンだったようだ。
「ケンカはしませんね。『トイレットペーパーが切れたら、なんで新しいのを入れておかないんだ』といった、小さな言い合いくらいはありますが。
僕と女房は性格が正反対。僕はわりと神経質で、どっちかっていうとクヨクヨ考えるほうなんだけど、妻は明るくておおらか。だから、救われています。人生最大の不幸が戦争体験なら、人生最大の幸せは妻と出会って一緒に生きてこられたこと。長生きの秘訣は妻の存在かな(笑)」
「ありがとう」などの感謝の言葉を意識して口にし、愛情表現もこまめにするという北村さん。元気なことに加え、幸せで長生き──すべての人がこうありたい、という姿に違いない。
(後編に続く)
取材・文/中野裕子(ジャーナリスト) 撮影/岩松喜平
プロフィール
1925年9月25日、高知市生まれ。本名:北村総一郎。高知大学農学部卒業後、24歳で上京。1961年、文学座演劇研究所に1期生として入り、1963年に劇団雲、1976年に劇団昴へ。テレビでも活動し、1997年放送開始のドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ系)で広い人気を獲得。【告知】舞台『フツーの生活 長崎編』:5月22日(木)~6月1日(日)、「Pit昴/サイスタジオ大山第一」(東京・板橋区大山町)で上演 作:中島淳彦 演出:北村総一朗