問題を「矮小化」する左翼学者たち
前編のテーマであった「尼港事件」を思い出していただきたい。そう、左翼歴史学者の「手口」を。彼らはまず、共産主義国家群の悪行は「教科書にも載せない」という形で消し去ろうとする。しかし、さすがに歴史事典(百科事典)から抹殺するわけにはいかないので「日本軍の不法行為が原因」などと、いかにも「日本が悪く、共産国家は正しい」という「ニュアンス」で記事を書く。
「日本人が非戦闘員に至るまでソビエト側に虐殺された」ことが歴史の記述としてはもっとも重要であるにもかかわらず、読者がそれに気がつかないようにするというのが彼ら左翼歴史学者の手口である。逆もまた真なり、であって、日本を貶めることが彼らの目的だから、日本が実行した善事や快挙はできるだけ無視をする。たとえば、シベリア出兵の期間中に日本軍が戦場に置き去りにされたポーランド孤児を救出した事実などだ。
しかし、世界各国が周知しており(実際この日本の人種差別撤廃を求める行動はアメリカの黒人団体から感謝されるなど世界の注目を浴びていた)抹殺しようにもできない問題はどうするか? おわかりだろう、「挿入を試みた」あるいは「そのほかの論点」などという語句を巧みに使って問題を矮小化するのである。
日本が成し遂げた人類史上の快挙と言えば、もう一つある。一九〇五年(明治38)、日露戦争に勝利したことである。いうまでも無く、有色人種の国家が初めて白人国家に勝ったということだ。これはこの先、人類が何千年の歴史を刻もうとも必ず特筆されるべき歴史上の重要事項であり、あくまでSFだが(笑)、仮に人類が滅亡した後に異星人が「地球人類史」を書くにあたっても絶対に落とせない重要項目である。では、それを前出の『詳説日本史』はどのように書いているか? 長文にわたるので一部だけ紹介しよう。
〈【日露戦争】
日本とロシアの交渉は1904(明治37)年初めに決裂し、同年2月、両国はたがいに宣戦を布告し、日露戦争が始まった。日本は、ロシアの満洲占領に反対するアメリカ・イギリス両国の経済的支援を得て、戦局を有利に展開した。1905年(明治38)年初めには、半年以上の包囲攻撃で多数の兵を失った末にようやく旅順要塞を陥落させ、ついで3月には奉天会戦で辛勝し、さらに5月の日本海海戦では、日本の連合艦隊がヨーロッパから回航してきたロシアのバルチック艦隊を全滅させた。(以下略)〉
もちろん、ウソは書いていない。強いて言えば、乃木希典大将の旅順要塞攻略を「乃木無能説」に基づいた見解で書いているところは問題だ。「半年以上(実質的には4か月)」「多数の兵を失った」というところにそれが示されている。前にも述べたように、乃木は決して無能な軍人では無いし、敵将アレクセイ・クロパトキンは「わずかな期間で乃木は旅順を攻略した」と高く評価していたのである(『逆説の日本史 第26巻 明治激闘編』参照)。しかし最大の問題は、この前後の記述を見てもこれが人類史上の極めて重大事件であることの記述がまったく無いことだ。