1985年「初の日本一は思い出深い」と石坂浩二さんは振り返る(写真/共同通信社)
1935年12月10日に株式会社大阪野球倶楽部が創立され、大阪タイガース(現在の阪神タイガース)が誕生して90周年になる。「週刊ポスト」では阪神タイガース90年史アニバーサリー特集を掲載。虎党として知られる俳優の石坂浩二さんに、タイガースへ寄せる思いを聞いた。
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子供のころから、70数年来の阪神ファンです。
きっかけは7歳のとき。大学野球の早慶戦に連れて行ってもらい、そこで慶応大の別当薫選手のプレーに目を奪われたんです。一目惚れでしたね。その別当選手が翌年、タイガースに入団したんです。別当選手は2年で移籍してしまうのですが、そのままタイガースを応援し続けてきました。不思議と飽きることはなかったですね。
一番の思い出は、やはり1985年に初の日本一になったことでしょうか。試合の展開や内容は正直あまり記憶にないのですが、とにかく勝ったことが嬉しかった。当時、黄金時代を築いた最強ライオンズを倒しただけに喜びはひとしおでした。
すべてのタイガースファンに共通するアイデンティティには、多かれ少なかれ、ジャイアンツに対するアンチの要素が含まれていると思うんです。巨人には負けたくない。カウンターパートとして並び立たなければいけない。パ・リーグの人気も出てきた現在のプロ野球は巨人一強時代ではないので、その意識が多少、薄れているかもしれないけれど、同年代の方のなかには強く刻み込まれているはずです。私の父が大の巨人ファンで、そのことに対する反骨心というか対抗心もあったのかもしれません。
それに阪神は、若手選手を育成することをチーム編成の中心に置いているチームです。もちろん、FAなどで選手を獲得することもあるけれど、勝利だけにこだわるならば、もっと積極的に補強してもいいはず。でも、敢えてそうはしないんです。“どこかの球団”のようになりふり構わずに選手をかき集めたりしない。その姿勢が好きです。
大阪のチームだけれど、まるで江戸っ子のような「粋」が根付いているからファンは辞められない。私が感じるタイガースというチームの一番の魅力は、「粋」を感じさせてくれるところなんです。
今年のチームも球団OBが監督を務めて、ドラフトで指名した若手選手を打線の中心に据えていますよね。チームに親近感が湧くんです。
大河ドラマの現場では、同じ阪神ファンの渡辺謙さんと試合結果について話すのが日課になっていましたよ(笑)。
タイガースには、創設100周年を迎える前にぜひ3度目の日本一を見せていただきたい。戦力の充実した今年は、そのチャンスだと思います。
取材・文/鵜飼克郎、田中周治
※週刊ポスト2025年5月30日号