ドラマ『なんで私が神説教』では学年主任を演じている(番組公式HPより)
時代の変化と結婚も飛躍のきっかけに
野呂さんの出演番組はドラマだけではありません。もう1つの柱であり、女優業が飛躍するきっかけとなったバラエティでの活躍も特筆すべきであり、さらに昨年から情報番組にもレギュラー出演しています。
ここ2週間程度をピックアップしても、10日放送の『笑ってコラえて!』(日本テレビ系)ではスタジオゲストとしてワイプでのリアクションのほか、「私の行き過ぎた趣味」としてカプセルトイへのこだわりを明かしたり、大先輩のヒロミさんをイジったりの大活躍。
13日放送の『家事ヤロウ』(テレビ朝日系)では「好きなおにぎり具材ベスト20」というテーマに合わせておいしそうに食べる姿を見せ、16日放送の『ハマダ歌謡祭!』(TBS系)では音楽クイズに答えたほか少女時代の「Gee」を歌って踊り、19日放送の『タミ様のお告げ』(TBS系)ではスタジオゲストとしてクイズやワイプをこなしました。トーク、クイズ、食リポ、ロケ、歌などをそつなくこなす万能ぶりがうかがえます。
さらに21日放送の情報番組『DayDay.』(日本テレビ系)では彦摩呂さんらとグルメロケを行ったほか、さらに同番組では金曜レギュラーとしても出演中。「野呂佳代の出るドラマにハズレなし」ではなく、「野呂佳代の出る番組にハズレなし」というリアルな状況がうかがえます。
アイドル時代、野呂さんの立ち位置は“お笑い担当”で「ぽっちゃりとした体型をイジられ、笑顔でツッコミを入れる」という流れが定番でした。時代は平成から令和に変わり、野呂さんは2020年に結婚。ぽっちゃり体型は個性とみなされるように変わり、野呂さん自身もナチュラルなリアクションが増えていきました。もともと、よく笑う明るい人柄で知られるだけに、ダイレクトに野呂さんの魅力が伝わるようになったのでしょう。
野呂さんは昨年のテレビ出演本数が207番組で「元AKB48トップの勝ち組」と言われる売れっ子ですが、アイドル時代は目立つことが少なく、人気メンバーではありませんでした。また、グループ卒業後はスケジュールがほぼない状態が続いて、「芸能活動からの撤退も考えた」という苦労人です。
さらにさかのぼると高校卒業後、約3年間「GAP渋谷店」でアルバイトし、約2年間「東京ディズニーシー」のキャストを務めたという経歴が明かされています。そんな社会経験が現在の自然な演技や親近感につながっているのかもしれません。
「存在感がありながら、誰からも嫌われづらい」というキャラクターは、現在のエンタメ界に最もフィットするタレントと言っていいでしょう。体調面さえ問題なければ他の死角は考えづらいだけに、まだまだドラマとバラエティに引っ張りだこの状態が続きそうです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。