岡本が抜けた穴はでかい
サード・浦田の送球が本塁方向にそれ、捕球のために伸ばした岡本の腕が走者と激しく交錯。左肘靭帯損傷と診断され、前半戦の復帰は絶望的だ。
ショートの名手としても知られた前出・広岡氏は、「これはアクシデントではなく、阿部監督による人災です」と断じた。
「岡本の守備をサードやファースト、レフトと固定しないために起きたことに他なりません。サードならサード、ファーストならファーストで固定しないと、それぞれのポジションでの応用動作が身につかない。“ここで育てる”という明確な意志がなく、便利屋のように扱ったがゆえに、送球がそれる突発的な状況に対応できず、ケガを負う事態となったのです」
ポジションを固定できない今季の巨人はここまで28失策で、他球団に水を空けてのリーグワーストだ。
「5月20日の阪神戦で阿部監督はリチャードを本職のサードではなくファーストで起用。この日のリチャードはエラーこそ記録されなかったものの、内野陣との連携や守備範囲の問題で出塁を許すケースが3回もありました」(前出・巨人番記者)
0対4で完敗したこの日の試合後、阿部監督は「ミスをしているようでは勝てない」とコメントしたが、根本的な原因は阿部監督自身にあるのではないか。
「育たなかったのではなく、育てられなかった」
阿部監督の手腕をめぐり「2つの問題がある」と指摘するのは、巨人を含むセ3球団で4番を打った広澤克実氏だ。
「1つ目は若手の育成が進められていないこと。選手層が薄いから、ケガ人が出た時に対応できない。岡本の離脱をプラスに変えるには、若手にチャンスを与えるのが定石ですが、今の巨人は使ってみたい若手がファームにいない。放出した秋広も、育たなかったのではなく、育てられなかった」
2つ目は「経験不足による心の揺れ」だという。
「4番の負傷離脱という経験したことのない有事が起き、アドバイスしてくれるコーチもいない。阿部監督のなかでは“調子のよさそうな選手を使う”が最優先事項になった。必然的に猫の目打線になります。しかし、岡本が抜けた巨人に3日続けて結果を出せる選手はいない。右往左往せずにじっくり使って、2週間後に打ち始めるような選手を見出さなければならないはずですが、経験が浅く、普段からファームを見ていない阿部監督は選手を長い目で見られずにいます」(広澤氏)
OBたちの“喝”が阿部監督に届かなければ、チームが浮上するのは難しいだろう。
※週刊ポスト2025年6月6・13日号