婚約会見での一コマ(時事通信フォト)
故・亜希子夫人との出会いの場で…
不屈の精神力で、長嶋さんは過酷なリハビリ生活を続けた。彼のエネルギーの源となっていたのが、2020年東京オリンピックだ。前回の東京五輪でコンパニオンをしていた故・亜希子夫人に長嶋さんがひと目ぼれしたというのは有名なエピソードだ。亡き妻との出会いの場ということもあり、長嶋さんは東京五輪に強い思い入れがあった。体調不良による入院が続いても、聖火ランの夢を諦めなかった。
原因不明の黄疸が消えず入院が長引き、一時はほぼ寝たきりに近い状態にもなったが、そこから奇跡の回復を遂げた。開会式には聖火ランナーとして王貞治さん、松井秀喜さんとともに登場。車椅子を使わず、自らの歩みで聖火を繋ぎ、海外メディアにも「開会式で日本がもっとも涙を流した瞬間」と報じられた。
かつて長嶋さん自身は、東京五輪についてこのように語っていた。
〈次のオリンピックは東京で日本のオリンピックになる。そこで自分に何ができるのかはまだ分からない。分からないけど、もし自分の役割があるとするなら、最高の人生になるね〉(『文藝春秋』2018年6月号)
さらに2021年には、球界で初めて文化勲章に選ばれた。不屈の意志で晩年も輝き続けて、長嶋さんは、“最高の人生”に満足しながら天国へと旅立ったのだろうか。ご冥福をお祈りします。