政府備蓄米を随意契約で調達した大手コンビニ「ファミリーマート」の販売状況を視察する小泉進次郎農林水産相(右)。6月5日(時事通信フォト)
昨夏の終わり頃から始まった米の品不足、価格高騰は「令和の米騒動」と呼ばれ、今も毎週月曜日に農水省が発表しているスーパーでのコメ平均価格が、大きなニュースとして取り上げられている。そこに風穴を開けたのが、失言で更迭された大臣の後任として農林水産大臣に就任した小泉進次郎氏だ。前回、環境大臣だったときには大胆な言動で人気も集めたが、風当たりも強かった。農水大臣となった小泉氏には、周囲にどんな風が吹いているのか。臨床心理士の岡村美奈さんが分析する。
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令和の米騒動に取り組む小泉進次郎農水相に強力なサポーター?が現れた。自民党の野村哲郎元農水相だ。5月31日に鹿屋市で開かれた自民党・森山裕幹事長の国政報告会で、野村氏は小泉農水相に対し「お父さんに似て相談することなく、自分で判断したものをマスコミに発表している」と発言。党内手続きを経ず、党の農林部会に諮らずに方針を決めたと批判した。この発言は図らずも、絶好のタイミングで小泉農水相の発言を際立たせる結果となった。さすが元農水相、皮肉るタイミングが絶妙だ。
米不足と高騰にうんざりしていたが、小泉農水相による備蓄米の随意契約が発表されてからわずか数日で、大手スーパーなどの店頭に安い米が並んだ。備蓄米の味比べをメディア参加のもと行い、古い米はまずいという先入観を払拭し国民に安心感を与えた。安い米を求めて人々が長蛇の列を作り、手にした人の中にはメディアのカメラに向けて米袋を高々と持ち上げて見せた人もいた。それぐらい世間では安い米への期待が高いのだ。
人はとにかく確実で安心が好きだといわれる。これまでのように手に入らないということは避けたい傾向が強い。だから安い米が手にはいるとわかれば、買えない、手に入らないという苦痛を避けるため、どんな苦労も惜しまない。先行きを心配する声もあるが、どうであれ世情は今、小泉氏に傾いている。そういう国民の気持ちや感情を野村氏は理解できなかったのだろう。これでは「米を買ったことがない」「米は売るほどある」と失言して更迭された江藤拓前農水相と同じだ。