貴乃花氏の現役時代の土俵入り(時事通信フォト)
“一強時代”がくる
鳥取事件後の18年に貴乃花氏は相撲協会を退職。
「北の湖理事長のもとでさんざんやらせていただいたので、もういいという気持ちでしたし、65歳(の定年)までいられないと思っていた」
外から相撲を見る立場となり、現在は平成の大相撲ブーム以来とも言える客入りが続いている。
「力士の頑張りの賜物です。ファンはみんな目が肥えた玄人。真剣にやっている力士は見ていてわかるんです」
本場所中は2023年に再婚した夫人と毎日、テレビ観戦しているという。
「結果だけ聞かせてもらえればいいんですが、妻が見ているから(笑)。もともと本職なので頭の中にいろいろ浮かんできて、説明はしたくないけど、妻が聞いてくるから……家庭内事情ですよ」
そう笑顔で話すと、傍で取材に同席していた夫人が「自分から一生懸命説明しているじゃない」と合いの手を入れ、また表情に笑みが浮かぶ。
「詳しく説明すると、“なるほどね”と言われるから、ついついね……」
熱心に土俵を見守り続ける貴乃花氏。自身のあとに10人の横綱が出たが、なかでも大の里は「抜けた存在」だと見る。
「順調に今の取り口に磨きを掛ければ、“一強時代”になると思います」
令和の大横綱になれるか――来場所から改めて、大の里の真価が問われることになる。
(前編記事から読む)
【聞き手・文】
鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。スポーツ、社会問題を中心に取材活動を重ね、野球界、角界の深奥に斬り込んだスクープで話題を集めた。近著に『審判はつらいよ』(小学館新書)。
※週刊ポスト2025年6月20日号