自宅には実母の写真を飾っている

自宅には実母の写真を飾っている

「この人がお母さんなんだ!」死因と同時に初めて知った「母の顔」

──どういうきっかけで?

宮津:児相の方が頑張って調べてくれて、私を〈ゆりかご〉に預けたのが母方の親戚だとわかったんです。実父のことはわからなかったのですが、私が東日本で生まれたことや、生後5か月で実母が交通事故死したこと、実母の墓の場所、自分の本籍や本当の誕生日、血液型などを初めて知りました。

 その後、宮津の父と墓参りに行ったり、児相を通して実母の写真をもらったりできました。私の場合、生後から3歳までの「記憶」と「記録」がまったくなかったので、自分の中ではとても大きい出来事でした。

──見えなかった過去が、少しずつ形を持ち始めたような感覚でしょうか。

宮津:そうですね。特に、写真が手に入ったことがものすごく大きかったです。それまでは「僕を産んだお母さんはどんな人だろう」と思っても、手掛かりがないのでボンヤリとしか描けなくて。でも、顔がわかったので「これがお母さんなんだ」と鮮明に浮かべられるようになりました。

 あとは、出自を単に言葉で聞くだけではなく、父と一緒にお墓参りをしたり、地域を歩いたりして「お母さんもここにいたんだ」と感じられたことも、心が満たされた理由かなと思います。

──それはよかったですね。

宮津:「やっとわかった!」という、欠けていたパズルのピースが埋まるような喜びがありました。

 それに、私があとで真実を知りショックを受けるよりは、小さい頃から「〈ゆりかご〉から来た」「血のつながりは無い」という過去を確認しながらも、ちゃんとプラスにとらえられるように両親が導いてくれたのも大きいと思います。

〈ゆりかご〉出身者は育ての親が真実を伏せていても、親族や近所の人、あるいは戸籍謄本を取り寄せたときなど、出自を知るきっかけはたくさんあるので、それはありがたかったですね。

 そして、そういう環境で育ったので、私自身も子どもの頃から折にふれ〈ゆりかご〉について考えてきましたし。

──それは「なぜ自分が〈ゆりかご〉に預けられたのか」を問うことになりますね。

宮津:〈ゆりかご〉は開設から18年経ちますが、いまだに「育児放棄を助長する」など非難の言葉があります。私自身も「そこに預けられた自分は、捨てられたのだ」と思うのは簡単です。

 でも、私は当事者として「ゆりかごは子どもを捨てる場所ではない」と強く感じます。実母が亡くなり、私は親戚の手で〈ゆりかご〉に預けられましたが、それは命を守ろうとする手段だったのではないか、と。

──その選択の背景に、どんな思いがあったかを考えると……。

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