熊本の子ども向け教育プロジェクト「子ども大学くまもと」で講演する宮津さん
〈ゆりかご〉は捨て場所ではない「命を大切に思うからこそ、わざわざ熊本まで…」
宮津:〈ゆりかご〉は私が預け入れ第1号で、今年の5月までに計193人預けられています。私が預けられた当時、ほとんどが熊本県外から来た子で、割合として一番多いのは熊本以外の九州、次が関東圏でした。ですから、私を預けた親戚もそうですが「わざわざ熊本まで行って、子どもを預ける」ケースが多いんです。
──そうなんですね。
宮津:自分がどうしても育てることができないときに、私の親戚は様々な選択肢がある中から、東日本からあえて熊本まで行き〈ゆりかご〉に託してくれた。他の多くの子もそうです。
それぞれの子が預けられた理由は、わからないこともあります。でも、子どもを連れた誰かが、わざわざ熊本まで行き〈ゆりかご〉の扉を開け、その子を預けた。私の場合も、親戚がおそらく私の命を大切に思って〈ゆりかご〉に預け入れた。だからこそ私は命が救われ、今の両親の元で育つことができたと思うんですよ。
──捨てるのではなく、生かそうとする選択だった?
宮津:そうです。〈ゆりかご〉に預け入れる行為は、子どもを連れてきた人の最後の愛の働きというか。「その子のためにできる精一杯のことをやろう」という気持ちの表れではないか。私はそう解釈しています。
【プロフィール】宮津航一(みやつ・こういち)/2003年生まれ。 2007年5月10日に慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」に開設初日に預けられ、その後里親の宮津美光・みどり夫妻に引き取られる。現在は「ふるさと元気子ども食堂」の代表や「一般社団法人子ども大学くまもと」理事長なども務めている。
取材・文/前島環夏
