フジテレビ問題を受けて特番出演はベテランの伊藤利尋アナだった(写真左・共同通信社)
一連のフジテレビ問題は、テレビ局とアナウンサーの関係性にも大きな影響を与えている。それでも、フジや日テレではアナウンサーをフィーチャーした特番が放送されている。その背景とは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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11日夜『千鳥かまいたちゴールデンアワー』(日本テレビ系)で「全国テッパンアナウンサー大集合SP」が放送されました。番組内では日本テレビ系のアナウンサー41人が集結し、水卜麻美アナや羽鳥慎一さんらを交えてトークを行い、「ベスト・オブ・テッパンアナ」を決定。
「称号をほしがるアナ」「父親にインスタを管理されているアナ」などのキャッチコピーをつけて各アナウンサーをフィーチャーしたほか、「ネットに好き勝手書かれる」「婚活アプリ顔出しできない」などの“あるある”エピソードが明かされ、ものまねなどの鉄板芸を披露するコーナーもありました。
その内容を見ていて思い出したのが、フジテレビのアナウンサー特番『FNS明石家さんまの推しアナGP』。これは『さんまのFNSアナウンサー全国一斉点検』をリニューアルして昨年4月に放送された特番ですが、今年は一連の騒動があったからなのか放送が見送られました。
視聴者にわかりづらいフジの起用姿勢
しかし、そのフジテレビは日テレのアナウンサー特番から5日後の16日夜、『呼び出し先生タナカ』で「優等生アナNo.1決定戦 NHK全民放キー局元エースアナ集結」を放送します。こちらの内容はフジテレビのアナウンサーと各局出身のアナウンサーが、ニュース映像に関するクイズや原稿読みなどで対決し、ナンバーワンを決めるというもの。2時間まるごとアナウンサーをフィーチャーした構成・演出であることは間違いありません。
また、フジテレビのアナウンサー特番で記憶に新しいのは、3月17日に放送された『ネプリーグ』の「各局出身アナウンサーNo.1決定戦2025」。今回の『呼び出し先生タナカ』と極めて似た構成でしたが、この特番はもともと1月27日に放送予定であり、騒動が深刻化する前に収録されました。さらにその1月27日は奇しくもフジテレビが10時間超にわたる記者会見を生放送した日。騒動の内容から「お蔵入り」という声もあがっていた中、2か月弱の時を経て3月17日放送されました。
アナウンサーをめぐるフジテレビの動きで見逃せないのは、第三者委員会の調査報告書を受けて発表した「再生・改革に向けた8つの具体策」。その中に「編成・バラエティ部門を解体・再編 アナウンス室を独立へ」という項目がありました。これは「編成・制作がキャスティングをする側、アナウンサーがされる側という従属的な関係性をなくす」ことを目的にした改革案。両者の調整役を果たすコーディネーター制度も創設するなど、「今後はアナウンサーの立場を守り、意思を尊重していく」という姿勢を感じさせられます。
アナウンサーにかかわるフジテレビの対応を簡単に整理すると、一連の騒動があったにもかかわらず、3月、6月にアナウンサー特番を放送。一方で明石家さんまさんの「推しアナGP」は放送を見送られました。さらにアナウンス室の独立を進め、アナウンサーの立場を守ろうとしています。
視聴者にしてみれば「フジテレビはアナウンサー特番を放送するのかしないのか、どちらなの?」「今後はどのようにアナウンサーを使っていくの?」などと方針がわからないのではないでしょうか。
また、そんな苦しい状況のフジテレビを知っているはずの日本テレビは、なぜこのタイミングでアナウンサー特番を放送したのか。主要局のTBSやテレビ朝日も含め、テレビ業界におけるアナウンサーの現状を掘り下げていきます。