神奈川警察署の一日署長。山中氏の弟夫妻が撮影した思い出の写真(1986年4月14日)
『すてきな片想い』、『逢いたい時にあなたはいない…』、『For You』など、1990年代のフジテレビ月9ドラマの主演を7回も務めた中山美穂さん(享年54)。主演した岩井俊二監督の映画『Love Letter』(1995年公開)では、ブルーリボン主演女優賞を受賞。日本を代表する女優として多くの作品に出演した美穂さんだが、原点は1985年に女優デビューを果たしたドラマ『毎度おさわがせします』(TBS系)だった。
ゴールデンタイムに放送された同作品は、「性」への興味に胸を膨らませる思春期の男子中学生と女子中・高生の性を描いたコミカルなドラマだった。美穂さんは不良少女ののどか役を演じ、下着姿で挑んだ第7話は視聴率21.4%。ブレイクの大きなきっかけとなった。
ようやくチャンスを掴み取った美穂さんだったが、素顔はドラマで演じた不良少女役とは程遠い口数の少ない少女だった。スタジオで彼女を取り囲む大勢のスタッフ、ドラマ初出演の現場は14歳の中学生にとって、見たことのない別世界だった。
だが、美穂さん大きな葛藤を抱えていた。そのとき、当時の事務所社長だった山中則男氏に本音を明かしたのだった。山中氏の著書「中山美穂『C』からの物語」(青志社)より一部抜粋して紹介します。(全3回の2回目)
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美穂は、何でもいいからテレビに出たかった子だ。歌手でも女優でも、できそうでないなら、エキストラでもいいからとにかくテレビに出たかった。『毎度おさわがせします』の仕事が決まった時、それを伝えると「テレビに出れるんだ!」とすごく嬉しがった。
ところが最初の撮影に入った時、裸になってベッドに入るシーンで、躊躇ってしまって撮影が止まってしまった。美穂は怒鳴られ現場で泣き出したこともあった。そのたびに、僕は「お前のとこのタレントは何をやってるんだ」と怒られた。